研究課題/領域番号 |
26461274
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大八木 保政 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30301336)
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研究分担者 |
山崎 亮 九州大学, 大学病院, 講師 (10467946)
飯沼 今日子 (本村) 九州大学, 医学部, 臨床・衛生検査技師 (20380644)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 3xTg-ADマウス / 糖尿病 / アポモルフィン / 記憶障害 / インスリン分解酵素 / インスリン受容体基質 |
研究実績の概要 |
【糖尿病(DM)合併3xTg-ADマウスの認知障害】 アルツハイマー病(AD)モデルの3xTg-ADマウスの6ヶ月齢8匹に対して、インスリン分泌低下型の1型糖尿病(DM)を誘導するstreptozotocinを連続5日間注射した。注射3ヶ月後のモリス水迷路(MWM)で8匹中4匹の記憶障害が悪化しており、インスリン分泌低下と認知障害が相関していた。一方、6ヶ月齢3xTg-AD 5匹に高フルクトース食(60%)・水(10%)を3ヶ月間与えて2型DMを誘導したところ、予想に反して4匹で記憶機能の改善が見られ、記憶障害が悪化した1匹では末梢インスリン反応性の低下が見られた。従って、インスリン抵抗性上昇及びインスリン分泌低下ともADマウスの記憶障害を促進すると推察された。 【アポモルフィン(APO)治療とAD神経細胞のインスリン抵抗性】 6か月及び12か月齢の3xTg-AD (各n=8)に対してAPO 5 mg/kgを週一回計5回皮下注射し、治療前後のMWMで有意な記憶力の改善を認めた。また、脳組織のウェスタンブロット及び免疫染色で、インスリン分解酵素(IDE)レベルの上昇及びセリンリン酸化インスリン受容体基質-1 (pS616-, pS636+639-IRS-1)レベルの低下を認め、APOによる神経細胞のインスリンシグナリング及びインスリン抵抗性の改善が示唆された(Nakamura et al, 投稿中, 2016)。 【AD患者に対するアポモルフィン治療】 NHO大牟田病院において、AD患者5名に対してAPO注射を週一回3ヶ月間実施し、ADAS-Jcogの言語記憶で一定の改善を認め、実際のAD患者に対するAPO治療の有用性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1型糖尿病あるいは2型糖尿病合併の3xTg-ADマウス作成は安定してきたので、解析のN数を増やしているところである。また、AD患者に対するアポモルフィンがある程度奏効することを確認できた。さらに糖尿病合併3xTg-ADマウスに対するアポモルフィンの有効性を確認することで、AD患者に対する臨床治験とともに近い将来の事業化へ向けた成果を得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って、今後はDM合併3xTg-ADマウスに対するAPO治療の有効性の検討、及びさらに精度の高いAPO治療の臨床治験を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年5月1日付けで、研究代表者が愛媛大学大学院医学系研究科老年・神経・総合診療内科学の教授に着任した。本研究計画に関しては、前所属機関の九州大学大学院医学研究院神経内科学の大学院生と共同研究を継続しているが、平行して愛媛大学の研究室をセットアップしているところである。そのため、当該年度では物品などの購入が予定よりもかなり少ない状況であった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は愛媛大学の実験室のセットアップが整い、また研究スタッフも安定してきたため、必要な抗体やキットなどの購入を勧める予定である。
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