研究実績の概要 |
【糖尿病(DM)合併3xTg-ADマウスの認知障害】 アルツハイマー病(AD)モデルの3xTg-ADマウスの6ヶ月齢に対して、インスリン分泌低下型の1型糖尿病(DM)を誘導するstreptozotocin (STZ)連続5日間注射モデル、高フルクトース食(HFuD)を3ヶ月間与えた2型DMモデル、および正常対象食を与えた対照群を各n=12で作成した。STZ注射3ヶ月後のモリス水迷路(MWM)で記憶障害が悪化し、対照的にHFuD群では記憶機能の有意な改善が見られた。 【DM合併3xTg-ADマウスにおける毒性ターンAβ42の形成促進】 Aβ42のターン構造変化により分解抵抗性が上昇し、神経毒性が増強されることが知られている。上記のマウスでは、HFuDよりもSTZ処理で認知障害と毒性ターン構造Aβ42レベルが相関しており、同時にリン酸化タウ蛋白蓄積とも相関していた。従って、インスリン分泌低下によりタウ蛋白リン酸化と細胞内Aβ42の毒性ターン構造形成が同時に促進されることが示唆された。 【アポモルフィン(APO)治療とAD神経細胞のインスリン抵抗性】 6か月及び12か月齢の3xTg-AD (各n=8)に対してAPO 5 mg/kgを週一回計5回皮下注射し、治療前後のMWMで有意な記憶力の改善を認めた。また、脳組織のウェスタンブロット及び免疫染色で、インスリン分解酵素(IDE)レベルの上昇及びセリンリン酸化インスリン受容体基質-1 (pS616-, pS636+639-IRS-1)レベルの低下を認め、APOによる神経細胞のインスリンシグナリング及びインスリン抵抗性の改善が示唆され、論文として報告した(Nakamura et al, J Alzheimers Dis, in press, 2017)。今後、DM合併3xTg-ADマウスに対するAPO治療の有効性を検討していく予定である。
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