研究課題/領域番号 |
26461275
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岡本 裕嗣 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (60709658)
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研究分担者 |
中川 正法 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50198040)
高嶋 博 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80372803)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ニューロパチー / Charcot-Marie-Tooth病 / 治療 / クルクミン / 小胞体ストレス / アポトーシス |
研究実績の概要 |
Charcot-Marie-Tooth病(以下CMT)は、臨床的にも遺伝学的にも多様な疾患である。我々は次世代シークエンサーを利用して、原因遺伝子の包括的遺伝子診断を継続的に実施してきている。しかし診断学の進歩に比べ、いまだ有効な治療法は開発されていない。本研究の主目的は本疾患の治療法の開発とそれにつながる機序の解明である。 治療薬としては、アスコルビン酸がCMT1Aモデルマウスに有効であるとされたのをうけ、世界中で大規模な臨床試験が行われたが、有効性をしめせるものはなかった。新規治療法として、様々な薬剤が、実験で有効性をしめされたが、人への投与までにいたった薬剤はほとんどない。 我々は候補薬の中でクルクミンに注目した。クルクミンは近年では抗炎症、抗酸化、抗腫瘍機能などが注目され、各種疾患での臨床応用が検討されている。我々は、CMTモデルマウスにおいてクルクミンが効果を示すのをうけ、その作用機序について検討した。クルクミンは、変異PMP22発現によるアポトーシスを減少させるが、それは、ユビキチンプロテオソーム系を活性化することによる小胞体ストレス反応の活性化が重要である。 初年度の平成26年度は、クルクミンの臨床応用について検討した。クルクミン治療の一番の問題点はバイオアベイラビィリティーの低さである。我々は細粒化技術により生体への吸収性を改善した薬剤に注目した。本剤は人において約27倍の吸収効率を有する。また既に他疾患で臨床研究が行われており、安全性もクリアしている。開発した企業と相談し、偽薬を含めた薬剤の提供と薬剤血中濃度測定をうける予定である。細粒化クルクミンを用いた臨床研究について、平成26年10月に鹿児島大学病院の臨床研究倫理審査を通過した。現在、平成27年度からの症例登録の開始にむけて準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床研究を行うにあたり、一番の問題は薬剤の選定であった。クルクミンのバイオアベイラビリティーの問題と共に、研究を迅速に遂行するために既に人への投与研究が行われていることも薬剤選定の重要な項目とした。 クルクミンはサプリメントとして多くの薬剤が市場にでているが、我々は、細粒化技術により生体への吸収性を改善した薬剤に注目した。本剤は人において約27倍の吸収効率を有する。また既に他疾患で研究が行われており、安全性もクリアしている点も研究に適していると判断した。開発した企業と相談し、臨床研究において偽薬を含めた薬剤の提供と薬剤血中濃度測定をうける予定である。細流化クルクミンを用いた臨床研究について、平成26年10月に鹿児島大学病院の臨床研究倫理審査を通過した。症例登録の開始にむけて準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は臨床研究開始を計画しており、当施設で最初の症例の投与開始を行う予定である。しかしCharcot-Marie-Tooth病は稀少疾患のため当施設だけで目標症例数に到達することは難しく、共同研究施設の追加登録を必要とする。臨床研究の倫理審査は各施設で通過するのに期間がかかることが予測される。また他の治療候補薬剤についての検討も引き続きおこなっていく。 治療研究を行って行く上で遺伝子異常を同定して確定診断を行っていくことは非常に重要なことであり、次世代シークエンサーによる遺伝子診断と病態解明を引き続き行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子診断については、当該研究費交付前にすでに終了している症例が平成26年度は多く、予定の研究費使用にいたらなかった。また、薬剤の選定、協力企業の選定に主たる時間を費やしたこと、臨床研究のための倫理委員会通過などの本研究実施のための準備に多くの時間を費やしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
臨床研究は遺伝子異常を同定された症例にかぎっているため、遺伝子検査を行うための試薬の購入を予定している。また、今年度から臨床研究が開始される臨床研究のための薬剤の購入費、データを集積するためのパソコン解析ソフトの購入も予定している。また新規候補薬同定のための薬剤購入、モデルマウスの購入、管理費、機能解析にも研究費をあてる可能性がある。ただしモデルマウスの解析については次年度に持ち越す可能性がある。成果発表のために学会参加するための費用、論文英文校正費用などを支出する予定である
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