研究課題/領域番号 |
26461275
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岡本 裕嗣 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (60709658)
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研究分担者 |
中川 正法 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50198040)
高嶋 博 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (80372803)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ニューロパチー / Charcot-Marie-Tooth病 / 治療 / クルミン / 小胞体ストレス / アポトーシス |
研究実績の概要 |
Charcot-Marie-Tooth病(以下CMT)は、臨床的および遺伝的に多様であり、50以上の原因遺伝子が報告されている。2007年からCMT原因遺伝子の包括的遺伝子診断を実践し、2012年5月から、次世代シークエンサーを利用して対象遺伝子を増やすと共に治療法探索のための研究をすすめている。182例中42例(23%)に原因遺伝子を同定した。常染色体劣性遺伝の家系群から自動変異判定システム (ESVD)を用いたエクソーム解析より新規原因遺伝子を3つ同定した。 治療への取り組みとしてCMTモデルマウスにおけるクルクミン治療の有効性と作用機序を同定し、クルクミンに異常タンパク蓄積の軽減作用があることを確認した。またバイオアベイラビィリティーについても吸収性のよい細粒化クルクミンを同定し、CMT患者への臨床試験を実施するために鹿児島大学病院倫理委員会を通過した。また企業と連携をとり偽薬を含めた提供をうけることを確認した。本研究では未成年者のエントリーを当初予定にいれていなかったために症例のエントリーがなかなか進まない。現在、同意を自分で判断できる未成年者のエントリーを行えるように準備中である。 HMSN-Pは沖縄・滋賀に2大集積地をもち、同疾患の最初の報告は当施設からのものである。脊髄性筋萎縮症にsensory neuropathyを合併した臨床像をもつ疾患で、TRKfused gene (TFG) が原因遺伝子として同定された。TFG 遺伝子は、小胞体からGolgi体を通じて細胞胞内外に蛋白が分泌される小胞愉送に関与しており,特に小胞体からの出口部位に存在することが判明しており、病態の関与に小胞体ストレスの増悪が考えられ、クルクミンが有効である可能性がある。同疾患の集積地で我々の関連施設である沖縄病院の倫理委員会を通過し、同疾患に対するクルクミンの臨床研究を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床研究を行うために遺伝子学的に確定診断を行うことは非常に重要なことである。次世代シークエンサーを用いた診断システムが次第に確立されてきた。182例中42例(23%)に原因遺伝子を同定した。MFN2変異が13例、GJB1変異が13例と多かった。次いでMPZ変異6例、NEFL変異4例、SH3TC2、GDAP1の変異が2例ずつ、PRPS1、TRPV4の変異がそれぞれ1例ずつ認められた。また新規原因遺伝子探索システムにより常染色体劣性遺伝の家系から新規に3つの遺伝子を同定した。その内にMME遺伝子は高齢発症の軸索型CMTの原因であることを証明した。 治療研究についてはクルクミンのバイオアベイラビィリティーを改善した薬剤を同定し、その薬剤を作っている会社と連絡をとり、偽薬の作成も含めた協力をしていただけること確認した。医師主導型治験にむけて倫理委員会を通過したが、遺伝子検査が確定した症例、成人症例のみに限定したため、治験に参加するのに適した症例数の蓄積が現在の一番の問題である。治験に対する理解と同意が得られる未成年まで症例の適応を拡げる予定である。またより確実に治験を行うために、単一施設として多くの同型の遺伝性ニューロパチーを有する沖縄病院に協力いただきHMSN-Pに対するクルクミン治療の準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
診断については現在の次世代シークエンサーによる探索を引き続き行うと共に、新規候補遺伝子を調べることを引き続き行なっていく。現在は主にエキソーム解析であり、全ゲノムシークエンスまで含めた研究を拡がりを今後もっていきたい。 治療研究に関しては、今年度に倫理委員会を通過したばかりだがHMSN-Pが症例が多く、比較的、研究に適している可能性がある。まずいち早く本研究を進めていきたい。また他のCMTに関しては、効果をみるためにADLが保たれた症例が望ましい。その意味で中高生世代の未成年の登録の必要性が今年度判明した。倫理委員会への変更申請などを経た後になるが、準備を整え、他のCMTに対する研究も進めていきたい。また同時にクルクミン以外の治療薬についても検討をすすめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
医師主導型治験の開始が適した症例が集まらなかったために費用が生じなかったため、その分が残高として生じた。また、国際学会へ発表する予定であったが、発表できなかったため繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来期は準備が整っており、臨床治験が開始する予定である。 また、遺伝子診断は治験のために引き続き行なっていく予定である。
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