研究課題/領域番号 |
26461280
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
柴 佳保里 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30468582)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | Parkin / PINK1 / mitophagy |
研究実績の概要 |
本研究は、パーキンソン病原因遺伝子産物であるPINK1およびParkinが、どのように不良ミトコンドリアを認識・除去するか解明することで、パーキンソン病の治療・予防への応用につなげることを目的とした。 PINK1, Parkinシグナル伝達の最大の謎は、PINK1のキナーゼ活性依存的にParkinが細胞質からミトコンドリアへ移行する分子メカニズムである。この分子メカニズムを解明するために、まずPINK1のキナーゼ基質を探索した。その結果、ユビキチンを同定し、in vitroにおいて、モノユビキチン・ポリユビキチン共にPINK1の基質であることを示した。また、Parkinはリン酸化ポリユビキチン鎖に高い親和性をもつことを明らかにした。そこで、ミトコンドリア上にリン酸化模倣型ポリユビキチン鎖を発現させると、Parkinが細胞質からミトコンドリアへと移行し、そのユビキチンリガーゼ活性が活性化されることを見出した。以上の知見から、PINK1がリン酸化したミトコンドリア上のポリユビキチン鎖に、Parkinが結合・活性化し、効率よく不良ミトコンドリアを認識するメカニズムを解明した。 次に、ミトコンドリア変性がみられるPINK1ノックアウトショウジョウバエの筋肉ミトコンドリア上にリン酸化ポリユビキチン鎖の模倣体を発現させることにより、筋肉ミトコンドリアの変性を抑制できることを示した。これは、リン酸化ポリユビキチン鎖の模倣体が内在性のParkinをミトコンドリアへ呼び寄せ、活性化させるためであると考えられ、パーキンソン病予防のヒントとなるアイデアを提示することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、PINK1のキナーゼ基質としてリン酸化ポリユビキチン鎖を同定し、さらにその役割を報告できた。また、関連する論文(PINK1によるParkinリン酸化の個体レベルでの意義、およびLys63にリンクするポリユビキチン鎖のPINK1-Parkinが介するマイトファジーにおける役割)を2報報告でき、達成度は順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
H26年度後半に、リン酸化ポリユビキチン鎖に親和性のある分子を網羅的に同定した。そのうち、PINK1-Parkin経路マイトファジーに関連する分子を、培養細胞を用いたRNA干渉スクリーニング、ショウジョウバエを用いた遺伝学的スクリーニングで絞り込む。絞り込まれた分子のマイトファジーや個体レベルでの役割をノックアウト細胞やノックアウトおよびトランスジェニックショウジョウバエを用いて詳細にキャラクタライズする予定である。さらに、これらの分子が、パーキンソン病の原因遺伝子である可能性、パーキンソン病の病態に関与する可能性を探索すると共に、治療・予防の分子標的となりうるか評価する。
|