研究課題
本研究課題では、PINK1-Parkinマイトファジーに関与する新規分子を同定し、その分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。まず、PINK1のリン酸化基質としてユビキチンを同定した。PINK1-Parkin依存的に形成されたリン酸化ポリユビキチン鎖は、膜電位の低下した不良ミトコンドリアの目印となる。PINK1とParkinは、このリン酸化ユビキチン鎖の増幅機構に必須であり、速やかに不良ミトコンドリアを除去する役割を持つことを明らかにした。さらに、ショウジョウバエを用いて、生体内においてもリン酸化ポリユビキチン鎖を介してPINK1とParkinが正常なミトコンドリアの機能維持に必要であることを示した。また、ヒト患者由来iPSドパミン神経細胞ではPINK1-Parkinマイトファジーが起こらないこと、ミトコンドリア膜電位低下させる薬剤を処理すると軸索内のミトコンドリア輸送に異常が生じることを明らかにした。これらの結果は、不良ミトコンドリアの排除不全や軸索内のミトコンドリア輸送機構の異常がPINK1とParkinに連鎖するパーキンソン病発症メカニズムに関与することを強く示唆している。さらに、ショウジョウバエの遺伝学的相互作用を利用したスクリーニングを行っており、PINK1-Parkinマイトファジーに関与する遺伝子領域を絞っている。今後、単一の遺伝子を同定し、解析を進めていく予定である。以上の結果から、PINK1、Parkinに連鎖するパーキンソン病発症機構の一部を解明できたと考えられ、さらなる発症メカニズムの解明・創薬分野に貢献できることを期待したい。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Hum Mol Genet.
巻: 26 ページ: 3172-3185
10.1093/hmg/ddx201.