研究課題/領域番号 |
26461281
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
斉藤 史明 帝京大学, 医学部, 准教授 (40286993)
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研究分担者 |
真先 敏弘 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (00585028)
萩原 宏毅 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (80276732)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 筋ジストロフィー / α-ジストログリカノパチー / α-ジストログリカン / フクチン / 酵素補充療法 |
研究実績の概要 |
α-ジストログリカン(α-DG)はジストロフィン糖蛋白複合体の構成蛋白質であり、糖鎖を介して細胞外のラミニンと結合することで細胞膜を安定化している。近年α-DGの糖鎖修飾を司る糖転移酵素群の遺伝子異常により筋ジストロフィー、脳奇形、心筋症など多彩な疾患が発症することが明らかとなりこれらはα-ジストログリカノパチーと総称されている。本研究はα-ジストログリカノパチーの原因となっている糖転移酵素を体外から投与することによりα-DG糖鎖修飾を回復させて疾患の治療を目指す、すなわち糖転移酵素補充療法の実現に向けての基礎的な研究を行うことを目的としている。 昨年度我々は福山型先天性筋ジストロフィーで欠損しているfukutinと、小胞体への運搬体として利用するリシンBサブユニットとの融合蛋白のコンストラクトを作製しfukutin欠損マウスES細胞を用いた蛋白質発現を試みた。しかしES細胞の遺伝子導入効率が低いための十分な量の発現が得られなかった。そこで本年度はCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて、発現効率の高いHEK293細胞のfukutinノックアウト株を作製した。この結果fukutin遺伝子のexon 5に1塩基挿入をホモで有する変異体を得る事ができた。この変異(c.439dupC)により下流に終止コドンが導入されるため(p.Leu147ProX10)不完全なfukutin蛋白質が産生されるものと考えられる。実際にウエスタンブロットにより本変異株ではfukutinの機能不全によりα-DGの糖鎖修飾が未成熟な状態に留まっていることが明らかとなった。今後本変異株をアッセイ系として用いることにより、糖転移酵素補充療法に用いるコンストラクトを検討・選定することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRISPR/Cas9によりfukutinノックアウトHEK293細胞株のアッセイ系を確立できた点は大きな前進であったと考える。しかし当初の計画では本年度のうちにコンストラクトの選定からfukutin融合蛋白質のスモールスケールでの精製、そして培養細胞への添加実験までを目指していたので、達成度としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
以下のように培養細胞を用いたin vivoの系における酵素補充療法の検討から、さらに疾患モデルマウスを用いた検討へと順次実験を進めていく。 1)培養細胞に対する糖転移酵素の補充によるα-DGの機能回復 各種fukutinコンストラクトを今回作製したfukutinノックアウトHEK293細胞株に遺伝子導入し、α-DGの糖鎖修飾が正常化するか否かを検討する。α-DGの糖鎖が正常化してラミニン結合能が回復したらそれらのコンストラクトを用いてHEK293細胞へ再度遺伝子導入を行い、fukutin融合蛋白質のスモールスケールでの精製を行う。得られた融合蛋白質をfukutinノックアウトHEK293細胞の培養細胞上清に添加し、これら蛋白質が細胞内へ取り込まれて小胞体からゴルジ体へ局在するかどうか、その結果としてα-DGの糖鎖修飾やラミニン結合能が回復するかどうかを検討する。 2)筋ジストロフィーモデルマウスに対する糖転移酵素補充療法の試み マウスへの投与実験に備えてfukutin融合蛋白質をラージスケールで精製する。そして同蛋白質を福山型先天性筋ジストロフィーのモデルマウスであるfukutin conditional knockoutマウスに体外から投与し、筋ジストロフィーに対する改善効果を検討する。このためにマウス骨格筋におけるα-DGの糖鎖修飾の正常化とラミニン結合能の回復の有無、程度を指標として投与量、投与期間、投与経路などを選択する。そしてマウスの外観、運動機能、血中CK値、骨格筋の病理組織像、などを指標に筋ジストロフィーモデルマウスに対する治療効果の有無を総合的に判定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたアフィニティ精製用ビーズの納入が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
アフィニティ精製用ビーズを購入する。
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