研究課題
ナトリウムポンプ病の家族性片麻痺性片頭痛の原因遺伝子であるα2サブユニットの解析に焦点をしぼり,片頭痛の病態解明とα2サブユニット遺伝子の新機能の解明を目指した。1. 野生型での発達段階を追った脳の各部位での単一細胞レベルでのα2サブユニット発現パターンの同定を目的とした。成体脳では各種グリア細胞と一部神経細胞での発現が、胎児脳では脳室上衣層に発現していることを同定した。なお成体脳は抗体染色で、胎児脳はmRNAの発現により解析を行った。2. 神経細胞や神経回路の動作様式について、小脳スライス標本を用いた電気生理学的手法にて、プルキンエ細胞への抑制性シナプス伝達・LTDの形成を解析した。片頭痛モデルマウスのα2サブユニットヘテロマウス(Atp1a2+/-)と同腹野生型の間で有意な差異は観察されなかった。扁桃体スライス標本を用いたシナプス伝達特性でもEPSCやIPSCのペアパルス比に有意差は認められなかった。現在その他の脳領域や異なる発生段階にも検討対象を広げ、変異の有無を精査している。3.片頭痛の前兆の病態を反映する皮質拡延性抑制(CSD)を野生型とAtp1a2 +/-それぞれで誘発し、誘発閾値および血管の収縮性について調べた(慶応大学神経内科 畝川先生・鈴木教授との共同研究)。種々の指標でgenotype間での有意な差が観察された。CSD後の脳の発火部位をc-Fos抗体染色にて調べた。現在論文投稿中である。4. α2サブユニットの点突然変異(マウス相同部位にヒトで見つかる変異を入れる)を有する新たなα2トランスジェニック(Tg)マウス3系統を作成・解析した。通常飼養下ではその行動に変化は観察されないが、1系統においてけいれん易誘発性を観察した。切片作成を行い、発火部位の同定を行った。偏頭痛の前兆とされる皮質拡散性抑制(CSD)誘発時の差異を同定するための実験を開始した。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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