研究課題/領域番号 |
26461285
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
大澤 裕 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80246511)
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研究分担者 |
西松 伸一郎 川崎医科大学, 医学部, 講師 (20222185)
村上 龍文 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (30330591)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 筋萎縮 / 筋ジストロフィー / サルコペニア / マイオスタチン |
研究実績の概要 |
マイオスタチンは骨格筋に特異的に発現し筋量を負に制御するユニークなTGF-β分子である。われわれは、独自にアッセイ系を構築し、マイオスタチンを生理的に阻害するプロドメインの阻害活性中心を絞り込み、これに相当する合成オリゴペプチドの投与によって野生型マウスの筋量を増加させることに成功した(特許出願:2013-17540)。本研究は、このペプチドを希少難病デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよび加齢性筋萎縮(サルコペニア)モデルマウスへ投与する。骨格筋解析によって、これらの共通病態と想定されるTGF-βシグナル亢進を是正する治療戦略の可否とその機構を探る。すなわち、TGF-βを標的とする新規低分子ペプチド薬の臨床応用を目指し、同時にTGF-βを介する筋萎縮の分子細胞機構の解明に挑む基礎研究である。平成27年度は、この阻害ペプチドを常染色体優性肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)1Cの疾患モデルマウスの前脛骨筋に投与し筋萎縮の改善に成功した。次いで、このペプチドによる筋萎縮改善の分子機構について詳細な解析を実施した。その結果、阻害活性中心が、予想された血中マイオスタチンリガンドの阻害機構の他に、筋細胞膜表面でのリガンド-膜受容体結合の特異的阻害という革新的な薬理機構を示すことを発見して論文発表をおこなった(Ohsawa Y, et al. PLoS One 2015;10:e0133713)。さらに、このペプチドの最適化を実施して、最重症型デュシェンヌ型筋ジストロフィージストロフィーモデルDBA/2-mdxマウスとサルコペニアモデルKlothoマウスに局所および全身投与し、骨格筋病変が改善するのか、衛星細胞が増加するか、マウス寿命が延長するかについて検討している(未発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LGMD1Cモデルマウスの筋萎縮改善機構の解析から、阻害活性中心が、Random coil(RC), Alpha-helix (AH), Latento lasso (LL)の3つの領域に分割され、それぞれ、I型膜キナーゼ受容体、リガンド、II型膜キナーゼ受容体と結合し、筋細胞膜上でリガンド-受容体結合を特異的に阻害するという革新的な薬理機構を発見した。この結果は、現在が米国FDAが"break-through therapy"に指定しているマイオスタチンII 型受容体抗体医薬(Bimagrumab)と比較して、より高い安全性と卓越した有効性が期待できる。そこでペプチド最適化により、最重症型デュシェンヌ型筋ジストロフィージストロフィーモデルとサルコペニアモデルモデルマウスへの全身投与による有効性を立証し、非臨床POCの獲得を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、阻害ペプチド投与マウスの筋萎縮改善の分子機構について、網羅的遺伝子発現解析によって検討し病態の鍵となる新たなマイオスタチン下流分子をスクリーニングし筋分化解析を実施する。このアプローチからTGF-βシグナル亢進を起点とする筋ジストロフィーおよびサルコペニア発症の分子機構を解明し、併せて阻害ペプチドによる改善機構を探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算計上していたよりも安価になった為
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度も実験継続の為、前年度の差額と合わせて物品を購入予定
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