研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は難治性・神経変性疾患の代表である。発症から平均3~5年で全身の骨格筋萎縮と筋力低下が進行し呼吸筋麻痺に至るため、日常生活動作の重篤な障害に陥るにもかかわらず、症状を改善し得る治療法が確立していない。このため、病態解明と治療標的分子の発見が急務となっている。ALS病態の中核をなす運動ニューロンのほぼ選択的変性脱落に対して、成体中枢神経系が元来もつ内在性の再生能は不十分で代償できないと考えられている。本研究では本邦家族性ALSの約20~30%ともっとも頻度の高い銅/亜鉛スーパーオキシド・ジスムターゼ遺伝子(SOD1)変異によるALSの動物モデル(ALSラット)を用い、成体脊髄に内在する再生機転を検索した。中でも神経再生・神経変性の両者において重要な意義をもつ微小血管の維持に不可欠な壁細胞の1つ、ペリサイト(周皮細胞)に注目した。週齢一致同腹仔を対照とし経時的に脊髄の組織学的解析を行うと、ALSラット脊髄に同定された新生ペリサイトは有意に増加し、そのピークは発症早期にあって発症後期には増殖の程度を減じることが明らかとなった。このプロファイルは、新生する微小血管内皮細胞と同様であった。さらにペリサイトに選択的に発現する受容体を標的として、ALSラット脊髄腔内にペリサイト増殖因子を持続投与する介入研究を実施し、溶媒投与対照群と比較して軽度ながら運動ニューロン保護効果を得た。今後、神経変性の抑止戦略の1つとなり得るため、本介入実験の再現性を確認するとともにその神経保護メカニズムについて解明を進めている。
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