研究実績の概要 |
多発性硬化症、視神経脊髄炎、Balo病の脱髄病巣におけるコネキシン(Cx)蛋白の神経病理学的解析が完了し、急性期の脱髄病巣では共通してアストロサイトのCx43脱落が広汎に認められることを見出した。一連の研究成果を英文総説として発表した(Masaki K. Neuropathology, 2015)。脱髄病巣におけるCx43脱落機序を解明するため、マウス大脳由来初代培養アストロサイトを用いてCx43発現を変化しうる因子を検討した。その結果、T細胞サブセットの中でもTh1細胞由来の液性因子がCx43発現を低下させることを見出した(Watanabe M, Masaki K, et al. Scientific Reports 2016)。一方、Cx43脱落と脱髄の関連をin vivoで評価するため、当科で新たな遺伝子改変マウスを作製した。現在までにTamoxifen によりinducible なアストロサイト特異的Cx43 conditional knockout(cKO)マウスの作成に成功している。また、Cx30 KOマウスにEAEを誘導し、視神経でミクログリアの活性化が亢進していること、軸索障害が生じていることを見出した。さらに、グリアシンシチウム破綻の観点から、中枢神経系に広く発現するグルコーストランスポーター(glucose transporters: GLUTs)および乳酸トランスポーター(monocarboxylate transporters: MCTs)の脱髄病巣における変化について解析した。アストロサイト足突起に発現するMCT4の急性期病変での脱落を発見した。一方、血管内皮細胞に発現するGLUT1や MCT1は保持されており、グリア細胞を介した栄養供給経路に障害がある可能性を見出した。
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