研究課題/領域番号 |
26461299
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
島 さゆり 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (50725984)
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研究分担者 |
武藤 多津郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (60190857)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Lipid rafts / 脳脊髄根末梢神経炎 / neutral glycolipid / 自己免疫 / 中枢・末梢脱髄連合症(CCPD) |
研究実績の概要 |
今年度は脳脊髄根末梢神経炎(Encephalomyeloradiculoneuropahty (EMRN))に加え、自己免疫が病態発現に関与する神経疾患について抗中性糖脂質抗体を測定し、本抗体のさらなる疾患特異性について検討した。 抗体については引き続き、Far-Easterm blot法(※)を用い、中性糖脂質であるLactosylcermide(LacCer)、Glucosylcermide(GlcCer)、Galactosylceramide(GalCer)、Cermide(Cer)に対する抗体活性を測定した。EMRNの症例追加だけではなく、①自己免疫性脳炎、感染性脳炎 ②急性散在性脳脊髄炎 ③多発性硬化症/視神経脊髄炎 ④ギランバレー症候群/Fisher症候群 ⑤慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー ⑥その他自己免疫の介在が示唆される疾患に加えて、その他神経疾患においても幅広く検出の有無について治療前後の血清・髄液を用いて確認した。 また、EMRNにおいては疾患概念を確立すべく、測定結果や、患者背景(経過、重症度、検査・画像所見など)との対比を行った。EMRNでは治療前で活動性の高い時期に抗中性糖脂質抗体の存在が認められており、その後の病勢が落ち着いた、慢性期には消失し、追加症例においても同様の結果が得られている。 (※)Far-Eastern Blot法:薄層プレート(TLCプレート)上にLacCer、GlcCer、GalCer、Cerをそれぞれ塗布し、展開溶媒で展開し、熱転写装置でPVDF膜に転写、そのPVDF膜をBlocking bufferで処理後、患者血清(希釈率500-2000倍)とで反応させた。その後2次抗体と反応させ、ECLを使用して、陽性バンドの検出を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は全国医療機関からの検索依頼が多数届いたこと、疾患の幅を広げるため、免疫性神経疾患に加えてその他の神経疾患においても治療前後で検体の測定を行ったため、予定していた実験スケジュールが間に合わず、全体として実行の遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
患者血清・髄液を凍結乾燥し、そこから全脂質の抽出を行い、定量化を試みる。同様に対照検体(①~⑧)からも抽出を行い、比較定量を行う。髄液、血清中の中性糖脂質が各々患者の臨床状態で変化するのか、もし変化するのであれば臨床上のどのようなマーカーとの相関があるのかを明らかにしたい。この定量化には必要に応じて、LC-MSを使用する。 さらに剖検脳(できれば、脊髄、神経根、末梢神経)を用いてlipid raft分画をショ糖密度勾配超遠心法で調整、それらから全脂質を抽出(FASEB J 2012)し、免疫染色法及び、従来の染色法(レゾルシノール試薬、アニサルデート試薬など)を用い、その以上を検出・検討する。また、高感度の検出系を作るため、抗GlcCer抗体陽性の患者血清、およびEMRN患者血清中の抗体を用い、患者脳の中性糖脂質の発現状態、さらにガングリオシド発現をコレラ毒素Bサブユニットをprobeとして解析を行う。同時にラフトマーカー蛋白であるTrk神経栄養因子受容体、Ras蛋白、fynチロシンキナーゼ、flotilinなどの抗体で組織染色を行いraftへの影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進歩状況に合わせて、物品購入をしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
ar-Eastern blot法で使用する試薬の購入、定量化における物品の購入、免疫組織染色で使用する試薬なども購入予定。さらに各学会への参加費用なども今後も予定している。
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