研究課題
本研究では、以下の項目を目的とした。すなわち、マウス多発性硬化症モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎モデル(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis: EAE) を作製し、疾患ステージに合わせた脊髄の凍結サンプルを採取し、ペプチド・タンパク質レベルのイメージング質量分析(Imaging Mass Spectrometry:IMS)法を行うこと、トリプシン処理を用いたタンパク質同定法をIMSに応用すること、同定したタンパク質の免疫組織解析を行うこと、脊髄組織へ浸潤した免疫細胞を分取し、細胞由来のプロテオーム解析を行うこと、ヒト臨床検体への出口戦略を練るため、独自のモノクローナル抗体を作製することである。最終年度にEAEマウスの脳組織に関する組織化学的解析を進めた結果、麻痺症状の現れる以前のステージから海馬や小脳周辺には、明らかな細胞の浸潤が確認された。これは、ヒトにおけるNormal Appearing white matter (NAWM)の概念をマウスにおいて再現し得たことを意味している。また症状が急性期のピークにさしかかったときにも同様の細胞浸潤の傾向が強く認められた一方、3週間を経た慢性期には、これらの顕著な細胞浸潤は認められなくなっていた。本モデルを対象にタンパク質レベルのIMSを実施したところ、単一イメージングでも階層的クラスタリングでも、上述のような浸潤細胞と一致する部位に特徴のあるスペクトラムの抽出に成功した。今後は、本候補分子の配列情報を明らかにすることにより、由来タンパク質を同定する。さらに、レーザーマイクロダイセクション法を併用して回収した細胞群のプロテオミクス解析を行い浸潤細胞群のもつ性質についての解析を進める。
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