研究課題
主要な認知症であるアルツハイマー型認知症(AD)あるいは、前頭側頭葉変性症(FTLD)患者脳組織には細胞内封入体として、神経原線維変化(タングル)が神経細胞核周囲および樹状突起に蓄積することが知られており、このタングルの主成分であるタウタンパク質の異常代謝が、休止期神経細胞の細胞周期再突入や変性・死滅を惹起している可能性が示唆されている。そこで本研究では、タウと細胞周期制御に関わるシグナル伝達分子との関係を明かにするべく実験を行った。種々の細胞周期関連シグナル伝達分子の特異抗体を用いて免疫組織学的解析を行った結果、AD脳においては、DNA損傷チェックポイントなどさまざまな細胞周期調節に関与していることが知られているChk1分子の細胞内局在に変化が認められ、Chk1とタングルとの共局在も観察された。また、細胞周期制御に関与し、タウのリン酸化酵素群のscaffoldして知られるタンパク質と、Chk1が結合することがわかった。種々の培養細胞を用いた実験から、Chk1の発現量やリン酸化レベルが、タウによって調節されていること、さらにタウの発現誘導もまたChk1によって調節を受けることも明かとなった。すでにタウリン酸化酵素として知られ、細胞周期調節への関与も示唆されている70-kDa S6K についても、タングルとの関係について解析を行ったところ、PI3K-PDK1経路の標的とされているS6KのT229のリン酸化が、AD脳において、AT8陽性のタングルと共局在していること見いだした。これらの知見は、タウ/タングルが関与する病態のメカニズム解明の一助となることが期待される。その他、すでに細胞周期調節への関与が示唆され、AD脳においてタングルと共局在することが報告されているPKN1のアイソフォームであるPKN2およびPKN3について、脳における発現量を測定し、局在について検討を行った。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Sci Rep.
10.1038/srep18979
Neuropathology.
10.1111/neup.12275.
Eur J Neurosci.
巻: 41 ページ: 1614-1623
10.1111/ejn.12921.