研究課題/領域番号 |
26461314
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
星 明彦 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (80381383)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アクアポリン / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
本年度はアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)および多系統萎縮症(MSA)剖検脳におけるAQPおよびAQP関連タンパクの解析を進めた。 AD群の側頭葉皮質におけるAQP4およびAQP1の発現は対照群よりも有意に高度であったが、GLT-1の発現は対照群より有意に低下していた。AD群におけるアミロイドβプラーク周辺のAQP4とGLT-1発現変化は、びまん性のAQP4発現増強にGLT-1発現低下を伴ったAD-lesion type 1とAQP4とGLT-1がアミロイドβプラーク様に共発現しているAD-lesion type 2に大別され、AD-lesion type 2でこれらの発現レベルは有意な正の相関性を示し、AD-lesion type 1では有意な相関性は認められなかった。また、AQP1とGLT-1の蛍光二重染色ではAQP1陽性構造物にGLT-1が共発現している像は稀であった。 PD群ではAD群ほどの顕著なGLT-1発現変化は観察されなかった。一方、AD群およびアストロサイトーシス像の明らかなPD-Neocortical群では、対照群に比しAQP4およびAQP1発現増強と共にKir4.1陽性細胞の増生が認められた。 MSA群の線条体ではAQP4およびAQP1の発現は対照群よりも高度である一方、GLT-1の発現は低下傾向を示し、尾状核よりも被殻においてその傾向が強かった。 今回の結果は、AD脳、PD脳およびMSA脳において神経細胞の根源的な生存に関わる水・グルタミン酸・カリウム代謝を制御するそれぞれAQP, GLT-1, Kir4.1発現の異常が明らかであることを証明しており、これら分子群の機能破綻が神経変性プロセスに関与することを示唆するものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種の神経変性疾患脳におけるAQPおよびAQP関連タンパク解析は当初の研究計画に沿っており、その成果についても満足している。 今回のADの研究成果は本年3月にニースで開催されたAD/PD国際学会で発表しており、学術論文として執筆を始めている。 PDのAQP発現に関する成果は現在学術誌に投稿中であり、追加データを加えてreviewerに再査読を行ってもらうことになっている。 MSAの研究成果は新たなデータを加えつつ、本年6月の日本神経病理学会総会で発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の達成度に記した論文執筆の継続やデータの補足を行いながら、特にMSAの研究成果の充実を図る。 これまでのような免疫組織学的解析を基本としながら、ウェスタン・ブロット法によるタンパク発現量のデータ解析にも着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
さらなる研究の推進、研究成果の学会発表および学術論文の出版費用などに助成金を要する。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫組織試薬・抗体購入、学会発表のための旅費・参加費および国際的な学術誌への投稿・出版費用などに助成金を使用する。
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