研究実績の概要 |
1)正常脳におけるカルシウムチャネルのサブタイプの発現分布 膜電位依存性カルシウムチャネルのサブタイプであるCav1.2 , Cav1.3, Cav2.1, Cav2.2, Cav2.3, Cav3.1, Cav3.2, Cav3.3 それぞれの正常脳における発現分布を確認した。正常では全体的にCav1.3とCav2.2の脳の発現が高く、特に橋核、下オリーブ核、小脳歯状核に分布していた。また、正常のヒトの脳ではIP3受容体が小脳Pukinje細胞に特異的に発現し、大脳にはほとんど認められなかった。リアノジン受容体は小脳顆粒層に重点的に発現していた。 2)ポリグルタミン病の脳におけるカルシウムチャネルのサブタイプとカルシウム結合蛋白質の分布、および正常脳との比較:膜電位依存性カルシウムチャネルのサブタイプの中でCav1.3チャネル受容体ではSCA3が基底核に、SCA2が黒質に強く発現していた。さらにCav2.2チャネル受容体ではSCA3が動眼神経核と黒質に強く発現していた。IP3受容体では小脳Purkinje細胞にSCA2が強く発現していた。Cav2.1, Cav2.2ではSCA1およびSCA2の橋核に核内封入体を認めた。 【考察】 正常脳とポリグルタミン病の脳における膜電位依存性カルシウムチャネルのサブタイプの発現分布に疾患によって違いがあることとからポリグルタミン病がカルシウムシグナリングの異常に深く関わっている可能性を示唆する。さらに発現の上昇している部位は疾患それぞれの障害部位に一致する(SCA2のPurkinje cell, 黒質、SCA3の動眼神経核、黒質など)ことから疾患の選択的障害にも関連している可能性がある。
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