研究課題/領域番号 |
26461318
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
伊藤 義彰 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90265786)
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研究分担者 |
大木 宏一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10348633)
畝川 美悠紀 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (10548481)
安部 貴人 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30365233)
山田 哲 慶應義塾大学, 医学部, 非常勤講師 (80445296) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | perfusion pressure / microsphere / watershed infarction |
研究実績の概要 |
平成27年度は、1)総頸動脈(CCA)を結紮後に塞栓子注入を行う低灌流圧群と、2)CCA結紮を行わずに塞栓子注入を行う非低灌流圧群において、境界領域への分布率を比較し、灌流圧の低下が分布パターンに与える影響を比較検討した。 雄性C57BL/6マウスを用い、1)左CCA結紮後、内頸動脈(ICA)に塞栓子を注入した低灌流圧群(n=7)と、2)CCA結紮を行わず左外頸動脈(ECA)を結紮後、ECAを経由してICAに塞栓子を注入した非低灌流圧群(n=5)を比較した。前者ではCCA結紮前後の、後者ではECA結紮前後の中大脳動脈領域の脳血流(CBF)をLaser Dopplerで計測した。直径13,24,40,69μmの4種類の蛍光microsphereを塞栓子として用い、屠殺後に蛍光顕微鏡下で脳表での分布を観察した。コントロールマウスのCCAから1 mlの墨汁を注入後、脳を摘出し中と前大脳動脈の近接部、中および前と後大脳動脈の近接部を同定して境界領域を設定した。 CBFは、低灌流圧群ではCCA結紮前後で有意に減少(変化率: -33.1±12.4%: mean±SD)したが、非低灌流圧群ではECA結紮前後で変化しなかった(0.11±0.48)。Microsphere の全皮質領域に対する境界領域への分布率(低灌流圧群vs非低灌流圧群)は、31.6±14.2 vs 31.1±7.0(粒子径13μm)、58.7±7.4 vs 56.2±15.7(24μm)、40.4±12.3 vs 38.3±6.4(40μm)、14.2±12.8 vs 11.6±11.0(69μm)で両群に有意な差はなかった。 本モデルでは、CCA結紮による灌流圧の低下は全ての粒子径において塞栓子の分布パターンに影響しなかった。我々の以前の報告と併せ、分布パターンには粒子径のみが強く影響している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した通りの結果が得られており、順調である。動物モデルの作成では、異なる径のmicrosphereを用いることで、大きさの異なる塞栓子が血管を閉塞する実際の臨床の機序に相応したモデルを形成することができている。 また、microsphereを投与する血管を、内頚動脈と外頸動脈で比較したところ、外頸動脈からの注入により塞栓子を注入した場合、内頚動脈の圧を変えることなくmicrosphereを挿入できるが、手技的にやや困難で時間がかかるデメリットを認めた。一方、内頚動脈結紮によりmicrosphereを注入する場合は、挿入は容易であるが、灌流圧の低下をきたす懸念があった。 今回の検討で、灌流圧はmicrospereの分布に影響しないことが分かり、今後の境界領域モデルの検討が容易になった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的であるフィブリン血栓を形成させてmicrosphere同様に血栓症モデルを作成する。あらかじめ、NOAC (DOAC)を投与しておくことで、血栓が自然に溶解し、再開通する過程を評価する。実臨床においても、NOACの投与下では脳出血が圧倒的に少ないことが報告されており、本研究が実臨床でのNOACの優れた点として再認識される可能性が高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初よりも該当年度での計画が順調に進み、物品費での消費が少なくて済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、昨年度までのmicrosphere法を利用して、新たにフィブリン血栓モデルを完成させる。昨年度までの計画は順調であったため、今年度の研究に資金を振り分けて、新たな血栓モデルを再開した方がよいと判断した。
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