研究課題/領域番号 |
26461325
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柴田 宏 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (20235584)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 甘味受容体 / 脂肪細胞 / T1R3 / グルコース輸送 / Rho / MCP-1 |
研究実績の概要 |
26年度の研究により,我々の作業仮説モデルが正しいことが証明された。そこで27年度は,「成熟脂肪細胞におけるT1R3ホモマー甘味受容体の機能の解明」を中心に研究を行った。 1.成熟脂肪細胞におけるT1R3 甘味受容体の機能の検討:成熟脂肪細胞においてもT1R1 およびT1R2 の発現は非常に僅かで,T1R3はホモダイマー受容体として発現し,甘味刺激によりGs と共役して, cAMP非依存性に微小管脱重合とRho-ROCK 経路活性化,Akt の抑制をもたらすことを明らかにした。2.インスリン感受性グルコース取込みにおけるT1R3 甘味受容体の機能の検討:微小管とAkt は,共にインスリンによるGLUT4(インスリン感受性グルコーストランスポーター)のトランスロケーションとグルコース取込み促進作用において,極めて重要な役割を担う細胞骨格とシグナル分子であることから,インスリン刺激によるグルコース取込み促進作用に対するT1R3 甘味受容体刺激の効果を検討した。甘味受容体刺激により,インスリンによる2-デオキシグルコース(2DG)取り込み促進作用が抑制され,ショ糖密度勾配膜分画法によりGLUT4 の細胞膜分画へのトランスロケーションが抑制されることを明らかにした。一方で,甘味受容体のグルコース取込み抑制作用のシグナル機構について検討した。前駆脂肪細胞と同様に,(1)Gαs ドミナント・ネガティブ変異体(Gαs-G226A)と構成的活性型変異体(Gαs-Q227L)およびを用いた検討を行い,T1R3ホモダイマーの作用がGs 依存性であること,またコレラ毒素とフォルスコリンの効果を比較しcAMP 非依存性であることを明らかにした。 3.炎症性サイトカイン産生におけるT1R3 甘味受容体の機能の検討:脂肪組織の慢性炎症に関与するMCP-1 等のサイトカイン産生に対する甘味受容体の機能を検討し,T1R3甘味受容体刺激により,前駆脂肪細胞ではMCP-1産生が促進され,成熟脂肪細胞では逆に抑制されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定した作業仮説と矛盾しない結果が得られており,その結果を学会等で発表している。また平成28年度以降の研究計画を一部前倒しで実施し,結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
28年度も当初の研究計画通り,マクロファージにおける甘味受容体の機能解析の検討を進めていく予定である。マクロファージに関しては,すでに27年度の検討により,RAW264.7細胞において,細胞遊走の抑制とTNFαおよびIL-6等の炎症性サイトカインの産生が促進されるという結果が得られていることから,さらにT1R3ノックアウトマウスを用いた検討を行う予定である。
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