研究課題/領域番号 |
26461326
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
河村 治清 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (70527902)
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研究分担者 |
小林 一貴 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (30400998)
竹本 稔 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60447307)
徳山 宏丈 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90385039)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | セマフォリン3G / グルカゴン / 膵α細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、新規のセマフォリン分子であるセマフォリン3G (Sema3G) がグルカゴン分泌を調節し、糖代謝の恒常性維持に寄与しているという仮説のもと、研究をすすめている。昨年度までの検討で、sema3g LacZ/+マウスを用いた免疫染色にてSema3Gが膵β細胞に発現しており、また、その受容体であるニューロピリン2が膵α細胞で発現していることが明らかとなった。また、空腹時の血中グルカゴン濃度がsema3gノックアウトマウスにおいて低値であり、Sema3Gが膵α細胞機能に対し、何らかの作用を有していることが示唆された。 そこで、sema3gノックアウトマウスにおける、膵島の形態変化を検討したところ、膵島の数および大きさ、膵β細胞、膵δ細胞の割合にはsema3gノックアウトマウスと野生型に違いがみられなかったものの、膵α細胞が約2倍に増加していることが免疫染色にて明らかになった。 膵α細胞増加の機序を明らかにするため、膵α細胞の増殖およびアポトーシスをそれぞれ、PCNA染色、TUNEL染色で解析したが、sema3gノックアウトマウスと野生型マウスでは違いはみられなかった。一方、Sema3gノックアウトマウスの膵島では膵内分泌細胞の分化、機能維持に必須のpancreas duodenum homeobox 1 (Pdx1)、Neurogenen3 (Ngn3) といった転写因子の発現が亢進していることがRT-PCRにて明らかとなった。このことより、Sema3Gは分化を抑制することにより膵α細胞数を減少させることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度はSema3Gの膵α細胞機能への影響を解明するために、ノックアウトマウスの形態学的観察および、培養膵α細胞を用いたin vitroでの検討を予定していた。 現在、ノックアウトマウスの糖代謝および形態学的観察は順調に進展しており、電子顕微鏡による観察も進行中である。 In vitroの解析は遅れており、使用される培養膵α細胞株において、基礎検討を行っているが、インスリンや血糖によるグルカゴン分泌応答で安定した結果が得られていないことが理由となっている。刺激条件や細胞株種の再考を必要としており、準備が整いしだい、Sema3Gの添加実験をすすめていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果を受け、平成28年度以降も、引き続きSema3Gの膵α細胞機能に対する作用の解明をすすめる。まず、Sema3Gノックアウトマウス膵島の形態学的解析として、電子顕微鏡による観察で詳細に検討する。また、膵α細胞のグルカゴン分泌は膵島を取り巻く微小循環や自律神経による調節も受けており、セマフォリンは元来、神経の走行を規定する因子として同定され、さらに、血管新生への関与も知られていることから、膵島周囲の神経および、血管網の構造に関しても免疫染色および電子顕微鏡で解析する。また、gain-of-functionの系としてアデノウイルスベクターによりSema3Gを過剰発現したマウスにおける、糖代謝、膵臓の形態変化も検討する。 in vitroでは、培養膵α細胞にSema3Gリコンビナント蛋白を添加し、グルコース、インスリン、脂肪酸などの刺激に対するグルカゴン分泌応答変化をELISA法にて解析する。また、増殖、アポトーシスへの影響をBrdUおよびTUNEL染色にて検討する。さらに、関与する受容体および、その細胞内シグナルに関しても検討を行っていく。 また、糖尿病の病態進展へのSema3Gの関わりを明らかにするため、1型および、2型糖尿病モデルマウスの膵島におけるSema3Gの発現変化をリアルタイムPCRで確認し、加えて、その発現調節機構を培養細胞を用いたin vitroの検討で解析していく。 以上の検討により、Sema3Gの糖尿病の病態生理への関与を明らかにし、新たな治療戦略となる可能性を明らかにしていきたい。
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