研究課題
本研究では、細胞内の蛋白分解系のエネルギー代謝恒常性維持における役割の統合的理解を目指す。平成27年度は次の3つの未解決課題に取り組んだ。1.肥満状態でプロテアソーム機能が低下する機序:申請者は先に、肥満による小胞体ストレス惹起の成因としてタンパク分解系の一つであるプロテアソーム機能異常を同定したが、本研究では、肥満症のいかなる病態がプロテアソーム機能を障害するかの解明を目指している。個体レベルでは、肥満・糖尿病モデルマウス(高脂肪食負荷マウス、自然発症肥満モデルob/obマウス、自然発症肥満2型糖尿病モデルdb/dbマウス)の肝臓で、キモトリプシン活性を指標としたプロテアソーム活性が低下することを確認した。その機序を探るため、細胞レベルで、肥満モデルの共通病態である高インスリン血症、酸化ストレス、脂肪毒性、分枝鎖アミノ酸がプロテアソーム活性に及ぼす作用を検討した。当初の予想に反し、上記病態を再現した細胞刺激は、培養肝細胞におけるプロテアソーム活性が亢進した。ごく最近、タンパク質合成系の制御因子mTORがプロテアソームを性あるいは負のいずれに制御するかが論争されている。申請者らの検討から、時間依存性に代償が生じる可能性を考えている。種々の栄養刺激あるいは飢餓状態で、プロテアソーム活性がいかに制御されるのか、特に上流の制御因子に関して検討を重ねる予定である。2.プロテアソーム活性阻害下での代償的オートファジーの意義とその基質: プロテアソーム機能が減弱するマウスの肝臓では、オートファジーが亢進した。平成27年度は、培養肝細胞で代償的オートファジーを誘導する系を確立し、その選択的基質を探索した。現在までに、複数のエネルギー代謝鍵分子がオートファジーの基質となることを見出しており、それらの生理学的意義を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
in vitro実験系の確立に試行錯誤を要したが、ようやく実験条件が確立しつつある。当初予定した4つの未解決課題のうち、少なくとも2つで予想外の新規知見が得られており、詳細な機序を検討中である。
in vitro実験の至適条件が確立しつつあり、最終年度には予定した課題に対してある程度の知見を得ることを期待する。平成28年度に成果の一部を投稿できる見込みである。また、個体レベルの研究には、さらなるマウス実験スペースとマンパワーが必要であり、大学院生やテクニシャン等の人材確保にも務めている。
残額以内で購入できる物品がなかったため。
研究計画に従って使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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