研究課題
グレリン脂肪酸修飾機構の検討に関しては、蛍光ラベルの脂肪酸を用いて、グレリン分泌細胞株MGN3-1細胞への長鎖脂肪酸取込みが、MIN6細胞と比較して高値であることをすでに見いだしていた。DNAマイクロアレイによって、両者の細胞での遺伝子発現比較を網羅的に行うことで、脂肪酸代謝に関わる遺伝子、long-chain fatty acyl-CoA synthetase family member 1 (Acsl1)がMGN3-1細胞で高発現しており、このことがMGN3-1細胞の高脂肪酸取込み能と、アシル化グレリンの効率的な産生に少なくとも一部関与していることを見いだした。グレリン分泌調節シグナルに関しては、昨年度までに樹立したαScreenを用いた細胞内cAMP評価系及びfura4を用いた細胞内Ca濃度評価系をもちいて、MGN3-1細胞に高発現するG蛋白共役型受容体(GPCR)についての評価を行った。MGN3-1細胞に発現するGPCR発現レベルをRNAシークエンスによって網羅的に同定し、高発現受容体のうちリガンド入手可能なものについての検討したところ、既知の受容体に加えて、プロスタグランジンE2がEP4受容体を介して、また、トリプトファンがGPR142を介してグレリン分泌を有意に刺激することを新たに見いだした。グレリン細胞単離に関しては、グレリンプロモーターCreERT2マウスを新たに開発し、Creレポーターマウスと交配することでグレリン細胞を蛍光ラベルし、FACSで単離することに成功した。単離したグレリン細胞で、RNAシークエンス、定量PCRを実施し、MGN3-1細胞で高発現していた受容体が、単離グレリン細胞にも発現していることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
脂肪酸代謝に関しては、グレリン細胞での脂肪酸とりこみとアシル化グレリン産生に関わる遺伝子ACSL1を新たに同定した。また、細胞内シグナルに関しても、GPCRシグナルについては、細胞を用いたcAMP、Caアッセイ系の構築、細胞におけるGPCR発現レベルからのアプローチで新たにグレリン分泌に関わる受容体を明らかにするなど順調に経過した。
化合物のスクリーニングに関しては、GPCRシグナルに関しては現在でも可能であるが、受容体発現の網羅的把握からのアプローチのほうがより有効であると現在は考えている。GPCR以外のシグナル経路についてはさらに検討が必要である。また、細胞レベルで見いだした知見に関しては、動物モデル等を用いたin vivoでの確認が必要であると考えている。
一部、今年度中に予定していた実験が次年度へ繰り越しになったため。
試薬代を中心とした物品代として使用する予定である。
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