研究課題/領域番号 |
26461333
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日下部 徹 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60452356)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脂肪萎縮症 / 全ゲノムシークエンス / 脂肪細胞分化 / 脂肪細胞機能 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
脂肪萎縮症は、脂肪組織の病的な萎縮、欠如を臨床的特徴とし、重度のインスリン抵抗性糖尿病、脂肪肝、高中性脂肪血症などの糖脂質代謝異常による合併症のため、極めて予後不良の疾患である。近年、脂肪萎縮症の原因遺伝子が相次いで報告されているが、全て脂肪細胞分化、増殖、機能に関わる遺伝子である。例えば、家族性部分性脂肪萎縮症の原因遺伝子であるPPARγは、脂肪細胞分化、増殖のマスターレギュレータであり、その活性化能を持つチアゾリジン誘導体は、脂肪細胞機能の改善、インスリン抵抗性改善をもたらし、有用な糖尿病治療薬になっている。本研究の目的は、申請者らが有する脂肪萎縮症コホートから未知の脂肪萎縮症原因遺伝子を同定し、その機能解析により、脂肪細胞分化機構の詳細を明らかにし、脂肪萎縮症の根本治療のみならず、糖尿病・肥満症の新規創薬ターゲットの同定を目指すことである。 2014年度は、これまでに申請者らが行ってきた「脂肪萎縮症に対するレプチン治療」、NPO法人「脂肪萎縮症・脂肪萎縮性糖尿病センター」における活動を通じて診療し得た患者のうち、原因遺伝子が特定できていない先天性全身性脂肪萎縮症1例、部分性脂肪萎縮症1例において検討を行った。現在、患者本人と両親あるいは片親と姉妹において、全ゲノムシークエンスを行い比較解析を進めている。また患者より、皮膚組織を採取して疾患特異的iPS細胞を作製している。 現在のところ、解析した各2症例において、変異遺伝子リストが得られている。今後は、これらの変異遺伝子リストの中から、文献的考察、iPS細胞を用いた解析等を合わせて、脂肪萎縮に関わる原因遺伝子を同定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪萎縮症は希少難病として知られており、日本における脂肪萎縮症患者数は約100例程度と推定されている。また日本における先天性全身性脂肪萎縮症症例の大部分はセイピン遺伝子に変異を有しており、原因不明の脂肪萎縮症症例には限りがある。そのため、当初より2-3例の解析を予定しており、ほぼ予定通りに進捗していると考えられる。また、「脂肪萎縮症・脂肪萎縮性糖尿病センター」における活動を通じて、医療機関からだけではなく、患者自身からの問い合わせも増えており、さらに解析症例が増える可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
得られた遺伝子変異リストの中から、文献的考察、iPS細胞を用いた解析、必要であれば脂肪萎縮症を発症していない患者家族からの追加全ゲノムシークエンス、候補遺伝子のノックアウトや過剰発現系を用いた解析等を行い、脂肪萎縮に関わる原因遺伝子を特定する予定である。 また脂肪萎縮症に対するレプチン補充治療が薬事承認を受けたこと、脂肪萎縮症が指定難病として承認されたこと、脂肪萎縮症の診断基準が作成されつつあることから、今後さらに症例数が増える可能性がある。引き続き、学会、「脂肪萎縮症・脂肪萎縮性糖尿病センター」における活動を通じて、臨床知見の蓄積整理を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
全ゲノムシークエンスに係る費用が、当初予定していたよりも低価格で可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、全ゲノムシークエンスの追加があり得る。また培養実験等に係る費用として使用予定である。
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