研究課題
脂肪萎縮症は、脂肪組織の病的な萎縮、欠如を臨床的特徴としている。脂肪萎縮症の合併症には、重度のインスリン抵抗性糖尿病、脂肪肝、高中性脂肪血症などの糖脂質代謝異常があり、これらは肥満症の合併症に酷似している。そのため、脂肪萎縮症と肥満症の対比を行うことで、脂肪萎縮症と肥満症の病態解明に繋がると考えられる。これまでに報告されている脂肪萎縮症の原因遺伝子は、全て脂肪細胞分化、増殖、機能に関わる遺伝子である。昨年度にエクソーム解析を行った2家系(全身性脂肪萎縮症1例、部分性脂肪萎縮症1例)についての検討を進めた。その結果、全身性脂肪萎縮症1例については、これまでに報告がない原因遺伝子変異を特定することができた(論文作成中)。また部分性脂肪萎縮症1例については、候補遺伝子の絞り込みができており、in vitroにおける解析を予定している。今後は、同定された原因遺伝子のさらなる解析を行うことで、脂肪萎縮症、肥満症に対する新たな治療法開発につなげたい。
2: おおむね順調に進展している
脂肪萎縮症は希少難病として知られており、国内では100例前後の症例数が想定されている。遺伝性脂肪萎縮症の原因遺伝子は、これまでに約10種類ほどが報告されている。そのため、解析症例としては当初より2-3例を予定していた。前年度に2家系の解析を行ったことから、本年度は新たな解析を行わなかった。前年度の解析結果より候補遺伝子を絞り込んだ。結果、全身性脂肪萎縮症1例については、新たな原因遺伝子変異を特定することができた(論文作成中)。部分性脂肪萎縮症1例については、候補遺伝子の絞り込みができている。
2013年、脂肪萎縮症に対するレプチン補充治療が薬事承認され、2015年、脂肪萎縮症が指定難病に承認された。これらを受け、日本内分泌学会主導で脂肪萎縮症に対する診療ガイドラインを作成中である。また、2014年度よりNPO法人「脂肪萎縮症・脂肪萎縮性糖尿病センター」は認定NPO法人日本ホルモンステーション「脂肪萎縮症委員会」として活動を継続しており、医療機関からの問い合わせにも対応している。引き続き、脂肪萎縮症に関する遺伝子解析を行い、臨床知見の蓄積を行っていく。
全ゲノムシークエンスに係る費用が、当初予定していたよりも割引価格であったため。また、脂肪萎縮症の症例数には限りがあり、今年度は昨年行った2家系の解析に集中して検討を行ったため。
今後、全ゲノムシークエンスの追加する予定がある。また培養実験等に係る費用として使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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