研究課題
昨年度までに行ったエクソーム解析により、全身性脂肪萎縮症1例において、AGPAT2遺伝子に新たな複合型ヘテロ接合体変異を同定した。MRIを用いて脂肪組織分布を詳細に検討したところ、BSCL2遺伝子変異症例では、全身の皮下・内臓脂肪組織、眼窩や足底部、骨髄内の脂肪組織も欠如していたのに対して、本症例では、全身の皮下・内臓脂肪組織は同程度に萎縮していたものの、眼窩や足底部の脂肪組織は保たれていた。また、BSCL2遺伝子変異症例の多くは小学校入学前から糖尿病を発症していたが、本症例は14歳時に糖尿病を指摘された。以上のことから、AGPAT2遺伝子変異症例の重症度は、BSCL2遺伝子変異症例と比較してマイルドである可能性が考えられた。本症例にレプチン補充治療を行ったところ、BSCL2遺伝子変異症例と同様に良好な代謝改善効果が得られた。BSCL2遺伝子の脂肪組織における機能を明らかにする目的で、BSCL2遺伝子ノックアウトラットを用いて、電子顕微鏡による残存脂肪組織の形態観察、さらにSVFの脂肪細胞分化誘導実験を行った。脂質の蓄積状態、脂肪細胞分化関連遺伝子の発現検討から、BSCL2遺伝子ノックアウトでは脂肪細胞へある程度は分化するものの、最終的な脂肪蓄積に障害を来たすと考えらえた。最終年度は、NPO法人「脂肪萎縮症・脂肪萎縮性糖尿病センター」を通じて紹介された部分性脂肪萎縮症の2家系について遺伝子解析を行った。これらは上半身はむしろ肥満しているものの、臀部から下肢の限局した皮下脂肪組織の萎縮が観察され、独立した家系ではあるが、ほぼ共通した脂肪組織の分布パターンを有していた。これまでに報告されている部分性脂肪萎縮症の原因遺伝子であるLMNA遺伝子、PPARγ遺伝子について遺伝子解析を行ったが変異は同定されず、新たな原因遺伝子による部分性脂肪萎縮症である可能性が考えらえた。
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BIO Clinica
巻: 32 ページ: 50-52
最新医学
巻: 71 ページ: 85-92