研究課題
本年度は、蛍光プローブの作製とその基礎的評価を行った。まず、基本骨格に、アゴニストとして膵β細胞特異的に発現しているglucagon like peptide 1受容体(GLP-1R)に結合することが知られているexendin4を用いた。Exendin 4のアミノ基に対してn-hydroxysuccinimide(NHS)を用いて蛍光分子を縮合反応により付加させた。精製は、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて行った。しかしながら、ペプチドとNHS-蛍光分子の反応効率が低いため収率が悪く、また、反応部位が複数存在することから蛍光分子の導入部位を特定できない問題があった。そのため、Ahx(aminohexanoic acid)をスペーサーとし、保護基を用いてペプチドの特定部位のみに蛍光分子(FITCもしくは TAMRA)を付加し、精製をHPLCにより行い、効率と純度の向上を達成し、目的化合物を得た。基本性能を評価するため、MIN6細胞を用いたflowcytometryおよび蛍光観察実験を行った。Flowcytometryでは蛍光プローブを反応させることにより蛍光強度の増強を認めた。しかしながら、プローブを反応させたMIN6細胞では蛍光が観察できなかった。そのため、GLP-1Rを強発現する細胞を作製し、同様の実験を行った。その結果、FloecytometryではMIN6細胞を用いたとき時と比べプローブの結合により蛍光強度が大きく変化し、かつ、予め過剰のexendinを反応させ同様の手順を行うと、blockingにより蛍光の変化は見られなかった。このことより、プローブのGLP-1Rへの特異的結合を示した。また、細胞の蛍光観察においてもプローブ由来の蛍光を観察することができた。また、結合実験の結果exendin4と比較して作製プローブの結合能が低いことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、まず、プローブの骨格について結合能の高い骨格を選定でき、かつ基本的な性能評価系の確立ができている。予定していたプローブ作成方法では効率よく化合物を得られない問題に対しても解決策を得ることができた。そのため、プローブの検討は残っているが、おおむね順調に進行していると考えている。
次年度は、蛍光プローブの構造最適化を引き続き行う。具体的には結合能の向上を目的とし、蛍光分子の結合部位および結合様式を検討し、その特異性(結合親和性、蛍光観察、flowcytometry、受容体への結合特異性など)を評価する予定である。まずはじめにN末端以外に、12位や27位のLysin残基が持つアミノ基へ蛍光分子を結合させる。その際にスペーサーを挟むことで、合成効率、収率、結合親和性について評価し最適な化合物の構造決定を目指す。プローブの最適構造が確立した時点で、マウスへの投与により膵臓内膵島への集積などin vivo、ex vivoなど生体を用いた評価を実施する予定である。
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Bioorganic & Medicinal Chemistry
巻: 22 ページ: 3270-3278
10.1016/j.bmc.2014.04.059