1型糖尿病や他の自己免疫疾患における免疫療法のめざましい進歩の一方で、膵島β細胞破壊を適確に評価できる指標の開発が望まれている。本研究では、メチル化/ 非メチル化インスリンDNAを利用した膵島β細胞破壊の半定量的評価法を開発し、1型糖尿病および他の自己免疫疾患において膵島β細胞破壊と膵島関連自己抗体の関連を網羅的に解析することで、1型糖尿病の発症・進展予知のための高感度予知法を開発し、最終的には進展阻止への応用を行うことを目的とした。 平成26年度においては、膵島β細胞内におけるインスリン遺伝子プロモーター領域のCpGの脱メチル化を利用した膵島β細胞破壊の半定量測定法を確立し、膵島関連自己抗体の出現・消失・出現順序と膵島β細胞破壊の関連について検討することを計画した。そこで、まず凍結保存された健常人血清より遊離DNAを抽出し、DNAメチル化キットにてバイサルファイト処理を施したのち、インスリン遺伝子をCpG非特異的プライマーによるPCR法で増幅した。次に、PCR産物を精製後、CpG特異的プライマーを用いた定量PCR法により、DNAメチル化および非メチル化インスリン遺伝子の量を半定量化した。この際、DNAを的確に増幅させるCpG非特異的プライマーのデザインやPCR条件の設定や、テンプレートとして用いるPCR産物の希釈倍率の検討に時間を要した。最終的には安定してデータが得られる条件を見出し、劇症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病の保存血清を用いて定量PCRにおけるサイクル数を利用した非メチル化インデックスの算出が可能になった。本研究の内容は国際的にも先駆的かつ独創的なものであり、その成果は現在国際的に展開されている介入試験においても非常に重要な位置づけになると考えられ、平成27年度には、膵島β細胞破壊の動態解析を進める予定であったが平成27年7月からの異動により研究の中止を余儀なくされた。
|