研究課題/領域番号 |
26461340
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西川 武志 熊本大学, 生命科学研究部, 特任教授 (70336212)
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研究分担者 |
荒木 栄一 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (10253733)
久木留 大介 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (10555759)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 糖尿病合併症 / グルカゴン / 活性酸素 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
膵性糖尿病では、他の糖尿病と比較して、合併症の軽症化や発症頻度の低下がみられる。本研究では、高血糖が電子伝達系への電子流入増加をきたすとともに、グルカゴンが電子伝達系酵素群活性化を生じ、これらが協調してミトコンドリア由来活性酸素 (mtROS)産生増加を惹起し、合併症が発症進展するとの仮説を検証する。本年度は培養血管内皮細胞を用いた以下1-5の実験を行った。 1) 10-6 Mのグルカゴン存在下で、1時間、3時間、24時間培養を行ったところ、1時間、3時間培養では明らかなmtROS増加を認めなかったが、24時間培養では有意なmtROS増加を認めた。2) 10-6~10-8Mのグルカゴン存在下で24時間培養を行ったところ、濃度依存性mtROS増加を認めた。3) 5.5mMグルコース、5.5mMグルコース+10-7Mグルカゴン、25mMグルコース、25mMグルコース+10-7Mグルカゴンの4群で培養を行ったところ、グルコース単独培養に比し、グルカゴンの添加は有意に細胞内ROS及びmtROSを増加させた。4) 膜透過性cAMPである8Br-cAMPの添加はグルカゴンと同様に、mtROSを増加させた。グルカゴンの作用がcAMPの上昇に依存することを示唆するものと考えた。5) PKA阻害剤であるH-89の添加はグルカゴンによるmtROS増加を抑制した。グルカゴンの作用がPKA活性化に依存することを示唆するものと考えた。 以上より、グルカゴンが24時間培養においては、濃度依存性にmtROS産生を増加させること、また高グルコースと相加的にmtROSを増加させうること、さらにその機序として、cAMPおよびPKAの関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは糖尿病血管合併症発症機序として「高血糖によるmtROS過剰産生」の意義を提唱している。しかし、DCCTの報告からはA1cと罹病期間のみでは合併症の発症を11%しか説明できないことが報告され、A1cで表現されない血糖の要素や他の因子が合併症の発症に関与する可能性が示唆されている。本研究では、他の因子として、グルカゴンにフォーカスを当て、研究を行っているが、2015年度の研究によって、グルカゴンがmtROSを増加させることは明らかになった。当初の予定通り、研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の研究によって、グルカゴンがmtROSを増加させることは明らかになった。本年度はその機序の詳細について、研究を推進していく予定である。 具体的にはミトコンドリア内部でのcAMP増加、及びPKA活性化の関与を明らかにするため、cAMP定量やmtPKA活性化の測定を行うとともに、様々な阻害剤や活性化剤を用いて、mtROSへの影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
すべて物品費として使用したが、3585円の残金が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予算と合算して、cAMP定量、PKA活性測定、ミトコンドリア分画抽出キット、mtROS及び細胞内ROS測定用試薬を初めとした実験試薬関連消耗品、培養細胞および成果発表のための旅費などに使用する予定である。
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