研究課題/領域番号 |
26461340
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構熊本医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
西川 武志 独立行政法人国立病院機構熊本医療センター(臨床研究部), その他部局等, その他 (70336212)
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研究分担者 |
荒木 栄一 熊本大学, その他の研究科, 教授 (10253733)
久木留 大介 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (10555759)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 糖尿病合併症 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
申請者らは糖尿病血管合併症発症機序として「高グルコースによるミトコンドリア由来活性酸素過剰産生」の意義を提唱している。この仮説をさらに発展させたものとして、これまでに以下の1-3の検討を行った。
1)高グルコース培養による細胞内低酸素誘導の可能性の検討:低酸素培養により、正常酸素培養と比較して、Pimonidazole染色増強を認めた。同様に、高グルコース培養では、正常グルコース培養と比較して、Pimonidazole染色増強を認めた。さらにLOX-1を用いて実験を行ったが、LOX-1でも高グルコース培養により、正常グルコース培養と比較して、LOX-1燐光増強を認めた。 2)高グルコース培養による細胞内低酸素誘導の機序の検討:ミトコンドリア電子伝達系阻害剤添加により、高グルコース培養で認めたPimonidazole染色増強は消失した。ミトコンドリアでの酸素消費亢進が高グルコース培養による細胞内低酸素誘導の一因と推察された。一方、MnSOD過剰発現細胞でも、高グルコース培養で認めたPimonidazole染色増強は消失した。高血糖によるミトコンドリア由来活性酸素過剰産生の細胞内低酸素への影響も示唆された。そこで、水や酸素のトランスポーターであるAQP1の発現を検討したところ、MnSOD過剰発現細胞でAQP1発現が増加していた。また過酸化水素添加はAQP1発現を抑制した。高血糖によるミトコンドリア由来活性酸素過剰産生がAQP1の発現を抑制し、細胞内低酸素を増強している可能性が示唆された。 3)AQP1過剰発現の効果の検討: AQP1過剰発現細胞では高グルコース培養で認めたPimonidazoleの染色増強は消失した。また虚血や糖尿病で報告されているエンドセリン-1誘導、フィブロネクチン産生増加、アポトーシス誘導のいずれもが、AQP1過剰発現細胞では消失した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは糖尿病血管合併症発症機序として「高グルコースによるミトコンドリア由来活性酸素過剰産生」の意義を提唱しているが、糖尿病合併症の発症機序にはまだまだ不明の点が多い。一方、糖尿病合併症発症にはHIF-1α-VEGF経路の関与が報告されているが、その誘導機序は十分に分かっていない。本研究では、高グルコースが細胞内低酸素状態を誘導する可能性を、低酸素プローブPimonidazoleおよび低酸素プローブLOX-1を用い、明らかにした。またその機序として、ミトコンドリアでの酸素消費亢進および高血糖によるミトコンドリア由来活性酸素過剰産生がAQP1の発現を抑制し、細胞内低酸素を増強している可能性を明らかにした。さらにAQP1過剰発現による合併症抑制の可能性も示した。 現在、実験は順調に進行し、仮説の概略についてはほぼ証明しえた。今後は、実験細部の疑問点について実験を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、これまでの研究によって、高血糖により組織内低酸素状態が誘導される可能性、またその機序としてミトコンドリアでの酸素消費亢進と、高血糖によるミトコンドリア由来活性酸素過剰産生がAQP1の発現を抑制し、細胞内低酸素を増強している可能性について証明した。今後は、実験細部の疑問点について実験を行っていく予定である。特に、高グルコース培養と低酸素培養の相加作用の有無、高グルコース培養時の細胞内ATP濃度の変化、細胞内低酸素とVEGF発現との関連などの検討を行う。これらの結果をまとめ、論文投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、次年度使用額が生じた理由は、研究に必要な試薬、材料、実験動物などの購入が予定より少なかった事があげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
当該未使用額は補助事業を誠実に遂行した結果生じたものであり、平成28年度に使用することによって、より研究が進展することが見込まれる。
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