研究課題/領域番号 |
26461342
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
木村 俊秀 大分大学, 医学部, 准教授 (60404373)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病 / インスリン / 膵B細胞 / シグナル伝達 / プロテオーム / タンパク質 / 低分子量Gタンパク質 / Rab27a |
研究実績の概要 |
申請者は、これまで不活性型と考えられてきたGDP型Rab27aに結合する分子としてcoronin3とIQGAP1を同定し、その結合が膵B細胞でエンドサイトーシスを制御することを示した。申請者は最近、GDP型Rab27a結合候補タンパク質としてプロトンポンプの構成分子のひとつであるvATPaseを同定した。本研究は、vATPaseの膵B細胞における機能を分子レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、GDP型Rab27aとvATPaseの結合様式を生化学的手法で調べた。 まず、vATPaseの精製タンパク質と抗体を作製した。次に、免疫沈降法とin vitro binding assayにより、vATPaseがGDP型Rab27aと細胞内で複合体を形成すると共に、その結合が直接であることを示した。また、精製タンパク質を用いた結合実験により解離定数(Kd)を算出し、vATPaseとGDP型Rab27aとの結合が特異的であることを示した。次に、vATPaseのドメイン構造を指標に様々なフラグメントを作製し、GDP型Rab27a結合部位を同定した。さらに、同定した結合部位をもとにドミナントネガティブ/アクティブ変異体の作製を行った。また、マウス膵切片を免疫染色し、vATPaseとRab27aが膵B細胞で共発現していることを明らかにした。 以上の結果より、GDP型Rab27aとvATPaseの結合様式が明らかになった。本研究成果は、次年度以降に行うvATPaseの活性制御機構やvATPaseによるエンドサイトーシスの制御機構を理解する上で極めて重要であると共に、GDP型Gタンパク質によるシグナリングという意味からも基礎生物学上重要な知見である。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、GDP型Rab27aとその結合タンパク質であるvATPaseが、インスリン顆粒膜のエンドサイトーシスを制御する分子メカニズムを、以下に従って解明する予定である。 平成26年度:GDP型Rab27aとvATPaseの結合を評価する。 平成27年度:その結合がプロトンポンプ活性に及ぼす影響を解析する。 平成28年度:GDP型Rab27aと結合したvATPaseがエンドサイトーシスで果たす役割を検討する。 本年度は、GDP型Rab27aとvATPaseの結合様式を生化学的な手法により明らかにした。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
vATPaseのリコンビナントタンパク質は、当初想定していたバキュロウイルスを用いた昆虫細胞からではなく、大腸菌より精製した。そのため、次年度使用額が生じた。当該研究費は、翌年度以降の研究費と共に、vATPaseの点変異体の作製にあてる予定である。平成27年度は、前年度の成果を基盤にvATPaseの活性制御機構を検討する。 1. 平成26年度に同定したGDP型Rab27a 結合サイトを参考に、複合体形成を特異的に抑制する中和抗体や、GDP型Rab27aに結合できないがvATPaseの他のサブユニットとは複合体を形成できる点変異体を作製する。 2. 細胞膜から取り込まれた顆粒内の酸性化を調べる。具体的には、MIN6細胞にvATPaseのsiRNAや中和抗体を導入し、pH蛍光プローブCypHer5の時間的/空間的動態をタイムラプス顕微鏡で解析する。 3. vATPaseをノックダウンした細胞に、RNAiの影響を受けないようにRNA配列を修飾したvATPaseや上記点変異体、ドミナントネガティブ/アクティブ変異体を発現させ、取り込まれた顆粒内の酸性化を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
vATPaseのリコンビナントタンパク質は、当初想定していたバキュロウイルスを用いた昆虫細胞からではなく、大腸菌より精製した。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該研究費は、翌年度以降の研究費と共に、vATPaseの点変異体の作製にあてる予定である。平成27年度は、前年度の成果を基盤にvATPaseの活性制御機構を検討する。
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