申請者は、これまで不活性型と考えられてきたGDP型Rab27aに結合する分子としてcoronin3とIQGAP1を同定し、その結合が膵B細胞でエンドサイトーシスを制御することを示した。申請者は最近、GDP型Rab27a結合候補タンパク質としてプロトンポンプの構成分子のひとつであるvATPaseを同定した。本研究は、vATPaseの膵B細胞における機能を分子レベルで明らかにすることを目的としている。平成26年度は、GDP型Rab27aとvATPaseの結合様式を生化学的手法で調べた。平成27年度は、その結合がプロトンポンプ活性に及ぼす影響を調べた。そこで本年度は、GDP型Rab27aとvATPaseの複合体がエンドサイトーシスで果たす役割を検討した。 まず、インスリン小胞内の急激なpH上昇が、vATPaseを不活性型に変換することを見出した。さらに、GDP型Rab27aが不活性型のvATPaseと結合し、活性型に再変換することを見出した。さらに、その再変換がエンドサイトーシスされた小胞のリサイクリングを調節することを明らかにした。 以上の結果より、GDP型Rab27aがvATPaseのプロトンポンプ活性を調節することでエンドサイトーシスの後半過程を制御することが明らかになった。本研究成果は、インスリン分泌機構を理解する上で極めて重要であると共に、GDP型Gタンパク質によるシグナリングという意味からも基礎生物学上重要な知見である。従って、本研究は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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