研究実績の概要 |
グルコースおよび消化管から分泌されたGLP-1の門脈血中濃度上昇が肝門脈域で迷走神経シグナルを惹起しインスリン分泌を刺激することを報告している。この機構の詳細を明らかにするため、平成28年度は門脈内の血糖上昇の同作用に対する影響を明らかにするため、迷走神経肝枝の切断(Vx)あるいは非切断(Sh)ラットで自由摂餌条件下、門脈内へのグルコース10mg/kg/min(注入方法を改良し平成27年度で計画した8mg/kg/minを増量)を7日間持続注入し(Gi)、注入前後でグルコース500mg/kgを頸静脈内ボーラス負荷(Bj)し、グルコースおよびインスリン濃度を測定した(前、注入終了後1, 3, 5, 10, 15, 30分)。測定結果について、迷走神経切断の有無による測定値の変動の違いをTwo-way repeated measures ANOVA, AUCで求めたインスリン分泌をpairedあるいはunpaired t-testで検定した。 Gi開始前、Bjに対するグルコース濃度の推移はVx、Sh間で有意差なし。Bjに対するインスリン分泌増加はVxでShの約2/3に減少したが、両群間で有意差は認めなかった(p=0.189)。Gi期間中の摂餌量、体重増加はVxとShとの間で有意差は認めなかった。Gi後、Bjに対するグルコース濃度の推移は両群で有意差なく、インスリン分泌量はGi開始前値からShで18%、Vxで26%増加したが(有意差なし)、インスリン濃度の推移はShとVxとの間で有意差は認めなかった。 肝迷走神経による神経性シグナルはインスリン分泌を強化する可能性はあるが、持続的な門脈内グルコース濃度上昇の同シグナルを介したインスリン分泌能を改善させる効果は乏しいと考えられた。
|