研究実績の概要 |
1型糖尿病感受性に最も強く関与する遺伝子座はHLAであるが、HLA以外の遺伝子として現在50以上の1型疾患感受性遺伝子座が欧米白人を中心とした研究で報告されている。しかしこれらを全てあわせても家族内集積の70-80%しか説明できない。残されたmissing heritabilityを明らかにし、遺伝素因の全貌を明らかにするための一つの方策として、アリル頻度は低いが浸透率が高いrare variantの探索の重要性が指摘されている。 日本人では1型糖尿病発症頻度が低いことから3人以上の同胞発症家系は極めて稀である。我々は、4姉妹中3人に1型糖尿病を認め、残りの1人は膵島自己抗体が陽性であるが糖尿病未発症である1家系を見いだし、この家系を用いて全エクソーム解析の手法により濃厚発症の責任遺伝子領域の探索を行い、欧米白人を用いた研究では解析できない候補遺伝子の同定を試みた。 4姉妹および両親の6名を対象にDNAライブラリーを作成し、HiSeqシステムで全エクソームシークエンスを行った。同定された全variantから、母親をキャリアとするドミナントモデルを想定して変異の絞り込みを行ない、さらに種を超えて保存されている遺伝子による絞り込み、ダメージスコアを考慮に入れた絞り込みの結果、11変異が抽出された。全ゲノム連鎖解析の結果と照合し11変異のうち3つが原因遺伝子変異の候補として同定された。そのうちの1多型は孤発例でのCase-Control studyにおいて、minor alleleが患者群で高頻度であった。(第89回日本内分泌学会学術総会, 京都, 2016.4.22, およびImmunology of Diabetes Society, 15th International Congress, San Francisco, California, 2017.1.20にて発表)。
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