研究課題/領域番号 |
26461350
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
加来 浩平 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10116709)
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研究分担者 |
下田 将司 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60388957)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵ラ氏島α細胞 / GLP-1産生細胞 / GLP-1R / GKラット / グルカゴン / インスリン / endosome / autocrine作用 |
研究実績の概要 |
我々は既に非糖尿病げっ歯類の膵ラ氏島α細胞からGLP-1が脈動性に分泌し、消化管GLP-1と異なりExendin-4(Ex4), IBMXにより分泌刺激を受けないことを報告した(第56回日本糖尿病年次学術集会、EASD 2013)。一方、膵α細胞におけるGLP-1受容体(GLP-1R)発現の有無については賛否両論あり結論は得られていない。そこで本年度は、糖尿病モデルラット膵α細胞からのGLP-1分泌様式およびGLP-1R局在の相違性を明らかにするとともにGLP-1Rの機能性について検討を進めた。 方法として、GK ラット, streptozotocin (STZ) 投与Wistar ラットを使用した。対照にSTZ非投与Wistarラットを用いた。膵単独環流によりEx4, IBMX存在下でinsulin, glucagon, GLP-1分泌か反応を検討した。また膵ラ氏島免疫染色でGLP-1Rの局在を検討し、endosome染色による可視化を試みた。その結果、GK ラットでは25週齢でcAMP依存性GLP-1分泌亢進を認めた。また25週齢GK とSTZ投与WistarラットにおいてEx4刺激によるGLP-1、glucagonの分泌亢進とともにinsulin分泌亢進を認めた。それに伴いglucagon分泌は抑制され、GLP-1によるinsulinを介するglucagon分泌抑制作用が示唆された。GLP-1, GLP-1Rは各種endozome関連マーカーと共局性のあるpuncture構造としてinsulin産生細胞(β細胞)のみならずGLP-1産生細胞(α細胞)にもみとめられた。すなわち糖尿病ラットのα細胞ではGLP-1Rが発現しており、GLP-1と結合後、βArrestin2と結合しinternalizationによりendosomeを形成したと考えられた。この結果、糖尿病ラットα細胞においてautocrine作用によるGLP-1分泌亢進と受容体を介するシグナル増幅機構の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵ラ氏島におけるインクレチンの役割は大きいが、そのメカニズムの詳細については殆ど解明されていなかった。申請者等は、膵ラ氏島α細胞からのGLP-1分泌を発見し、その意義の解明を進めてきた。この1年間の研究成果として、まず糖尿病状態では膵α細胞GLP-1分泌にautocrine機構が存在することを明らかにした。さらに機能するGLP-1Rが存在することを確認するため、endosome染色による可視化を試み、GLP-1, GLP-1Rに対する2抗体とendosome関連マーカーであるβArrestin2,EEA-1, Rab11, Rab7の1抗体を組み合わせて3重染色をし、Alexa 405, 488, 594結合二次抗体を使用し共焦点顕微鏡でクロストークを排除してGLP-1Rとの共局性を明らかにした。この成果は、これまで困難であったGLP-1Rの存在と機能解析に大きな進展をもたらすものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、糖尿病ラット膵α細胞では機能するGLP-1Rの発現を認め、GLP-1刺激によりglucagon, GLP-1分泌を促進させるというautocrine機構の存在が明らかになった。この結果は、糖尿病における奇異性glucagon分泌亢進にはα細胞におけるGLP-1R刺激が関与する可能性を思わせるものであった。今後は。これまでの成果を基に、膵ラ氏島におけるインクレチンの機能と役割について更に解明を進めてゆく。そのために、GLP-1分泌のautocrine 機構のさらなる詳細なメカニズム解明とともに、paracrine機構についての検討を行う。すなわち膵ラ氏島由来GLP-1分泌が、種々の膵ラ氏島細胞の機能および分化にどのように関わるか、糖尿病および非糖尿病状態で、役割は異なるのか等について検討を進めてゆく予定である。
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