研究課題
[目的] 本研究では、膵β細胞について、DNAメチル化による遺伝子発現制御と生体代謝調節メカニズムとの関連をゲノムワイドに解析することにより、エピゲノムと細胞機能との関係の統合的な理解への到達を目標とする。[方法] 本研究計画では、以下の各課題を明らかにすることにより、DNAメチル化による膵β細胞の恒常性形成・維持機構と、その破綻による病態形成・生理変動メカニズムを明らかにする。1)膵β細胞株において、DNAメチル化が遺伝子発現に関連している領域の同定、2)膵β細胞の最終分化過程における、DNAメチル化の意義の解析、3)糖尿病の膵β細胞障害における、DNAメチル化による遺伝子発現の制御機構の解明。[結果] 1)結果は論文発表されたが、この解析により、膵β細胞株とマウス単離膵島では、遺伝子発現変動パターンが必ずしも一致しない事も判明した。2)生後4週齢と8週齢の単離膵島について、網羅的遺伝子発現解析を施行した。その結果、この期間で発現が減弱する多くの分子を同定した。次に、このような成熟分化過程の膵島における遺伝子発現抑制メカニズムを解析するため、4週齢と8週齢のマウス膵島DNAのメチル化領域を濃縮しシークエンスする事により、ゲノムワイドにDNAメチル化を解析した。その結果、ゲノム全体では、4週齢の膵島のDNAがよりメチル化されていたが、成熟膵島で発現が抑制される分子の制御領域には、8週齢のDNAでよりメチル化が認められるものが存在した。また、成熟β細胞に発現する転写因子MafAの蛍光レポーターマウスの膵島を、MafA陽性ならびに陰性細胞に分離し、成熟β細胞における遺伝子発現を解析した。3)糖尿病モデルマウスの膵島における遺伝子発現を解析したところ、2)で同定された『成熟膵島で抑制されている』分子群の多くに発現増強が認められ、β細胞機能障害の原因となる可能性が考えられた。
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Oncology Letters
巻: 13巻 ページ: 1731~1740
https://doi.org/10.3892/ol.2017.5628
Cell Structure and Function
巻: 41巻 ページ: 23~31
doi: 10.1247/csf.15015