研究課題
白色脂肪細胞分化過程におけるprecursor messenger RNA (pre-mRNA)の選択的スプライシングの重要性を網羅的に検討する目的で、私達が以前同定した転写共役因子PDIP1に会合するスプライシング因子THRAP3 (Katano-Toki A, et al. Mol Endocrinol 2012)に対するshort interfering RNAをエレクトロポレーション法で導入し、分化誘導因子添加後4日目にtotal RNAを抽出し、Affimetrix社マウスエキソンアレイを用いて解析を行った。その結果、THRAP3ノックダウンにより、splicing indexが3以上に増加するexon数が約600個 (遺伝子数約400)が同定され、逆にsplicing indexが3未満に減少するexonが約800個 (遺伝子数約600)が同定された。このうち、大変動しているエキソン群についてRT-PCR法を用いて実際にスプライシング変化が起こっているか検証を行った。またエキソンアレイデータのGene ontology解析を行い、機能的にどのような遺伝子群のスプライシングに多く変化が起こっているか検証を行った。以上の成績より、3T3-L1脂肪細胞分化過程においてTHRAP3が多くの遺伝子の転写のみならず、選択的スプライシングを調節して脂肪細胞分化を制御する可能性が示唆された。現在、内因性スプライシング因子を臓器特異的に欠損する遺伝子改変マウスの作成を進めており、樹立に成功すれば脂肪細胞分化におけるスプライシング因子の生体内における機能解析が可能となる。
2: おおむね順調に進展している
前年度実施報告書に記載した研究内容に関して、研究をおおむね遂行し、次年度研究に向けてスプライシング因子欠損マウスの作成も順調である。
今後更なる3T3-L1細胞エキソンアレイ解析データの検証および同定された標的遺伝子の選択的スプライシングミニ遺伝子の構築とそのスプライシング解析を行う。更に脂肪細胞特異的にスプライシング因子を欠損した遺伝子改変マウスを用いて、白色脂肪細胞分化や機能における当該選択的スプライシング因子の生理学的な重要性についてin vinoにおける解析を進める。
2014年度使用予定額の一部が2015年度に繰り越したため。
翌年度分として請求した助成金と合わせて2016年度は、主に臓器特異的選択的スプライシング因子欠損マウスを用いたin vivo解析に必要な消耗品費およびエキソンアレイ解析費として使用予定である。
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