我々は、心血管疾患の重大なリスク要因となる、高脂肪食に伴うメタボリックシンドロームの病態解明を目指して、代謝疾患における免疫細胞賦活化機構を解明することを目的とし、研究を行っている。脂肪組織を炎症にかたむける初期の因子として、リゾリン脂質の一つ、リゾホスファチジン酸の生合成酵素であるオートタキシン(ATX、ENPP2)を同定した。脂肪組織炎症に加えてインスリン抵抗性にも寄与しており、多面的な作用があると考えられた。さらに、ENPP2はバイオマーカーとしての有用性も持っており、代謝性疾患に対する診療にも有用と考えられた(2014年 Diabetes)。 また、メタボリック症候群の危険因子に関連するヒト血清中のガングリオシドGM3分子種の同定を行い、GM3 (d18:1-h24:1)が、メタボリック症候群スクリーニングの最良候補となることを、2015年PLoS One誌に共著者として発表した。さらに、脂肪組織から分泌されるアディポネクチンが、低値であれば脂肪肝発症の、高値であれば将来の骨折発症の予測因子となりうることを、検診受診者のデータベースより明らかにし、2016 年学会にて発表を行った。新たな造血過程を生体骨髄イメージングにより明らかにしており、2015年度、第二著者としてJ Cell Biology誌に論文が掲載された。 ヒト臨床診断につなげるため、2016年度以降は、大型動物イメージングに特化したシステム開発と実証を目指した。レーザーを用いた一光子共焦点・二光子顕微鏡観察、さらに、マクロイメージャーを用いた蛍光・発光・反射光同時観察を組み合わせたイメージングシステムを用いることができれば、自由摂食の下で全身の代謝臓器が応答するのか、肥満に伴う脂肪組織での慢性炎症はどのように形成されるのかといった疑問を明らかにすることができ、今後の展開が期待できる技術と考えられた。
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