本年度はSdf2l1の機能解明を更に進めた。酵母におけるSdf2l1のオルソログであるPmt2pを欠損した株では、unfolded proteinのモデル蛋白のO-マンノシル化が起きず、適切に分解されないことが知られている。Pmt2p欠損株にPmt2p自体を戻すとモデル蛋白のO-マンノシル化が回復した一方で、Pmt2pの活性中心をマウスのSdf2l1で置換した融合蛋白Pmt2p-Sdf2l1を発現させても、そのような変化は見られなかった。このことからSdf2l1はO-マンノシル化活性自体は有さないことが示唆された。 そこでSdf2l1が他の蛋白との相互作用を介して機能を発揮する可能性を考えた。酵母でPmt1/2pと相互作用が知られている蛋白である輸送膜蛋白p24が挙げられ、その哺乳動物におけるオルソログのTMED10に着目した。実際に初代肝細胞を用いた解析で、免疫沈降によりSdf2l1とTMED10は相互作用を有し、またTMED10のノックダウンでもSdf2l1のノックダウンと同様、ユビキチン化を受けた変異インスリンが蓄積することも明らかとなった。 このことからSdf2l1は哺乳動物においても、小胞体膜上に存在する輸送蛋白と相互作用をしながら、小胞体のホメオスタシスの維持に寄与しているものと考えられた。
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