研究課題
ANGPTL8 (Betatrophin) は近年膵β細胞増殖作用が確認され新規糖尿病治療薬として期待されているが,同時に制御している脂質代謝での機能を含めヒトでの重要性は未確立である.ベータトロフィンはリポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性を阻害することから別名Lipasin(Lipase inhibitor)と呼ばれるが,LPLの活性制御がベータトロフィンの作用として脂質代謝のみに影響するのか,あるいは糖代謝にも影響するのかは不明である.我々は脂質異常症患者および健康人を対象として機能低下型変異であるR59Wが,脂質代謝および糖代謝,さらに冠動脈硬化症に及ぼす影響について,ヘパリン負荷LPL活性との関連を検討した.その結果LPL活性正常群においては機能低下型R59WはLPL活性亢進を介するHDL-C上昇だけではなく,血糖およびHbA1c低値に関連していた.さらに機能低下型変異は冠動脈造影において冠動脈硬化症進展がより軽症であった.その一方LPL活性低下群においてはこの様な好ましい効果は得られず,逆にHDL-C低下,血糖およびHbA1c高値,さらにブドウ糖負荷試験におけるインスリン分泌能の低下に関連が見られ,LPL活性がベータトロフィン機能全体において重要な役割がある可能性を見いだした.この成果はAmerican Heart Association Scientific Sessions 2014(米国シカゴ)において報告した.
2: おおむね順調に進展している
当該遺伝子の解析は予定通り進行しており,また薬物療法による影響の研究についても概ね予定通り進行している.
今年度は予定通り薬物療法による当該分子の働きを明らかにしていく予定である.脂質治療薬が糖代謝に与える影響については昨今非常に注目されているところであり,有用な知見を得ることが期待できる.
解析予定の臨床サンプル採取の一部が,年度をまたいだため解析が次年度になったため.
年度をまたいだサンプル数は少数であり,次年度の解析は予定通り施行可能である.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Clin Biochem
巻: 47 ページ: 1326-8
doi: 10.1016/j.clinbiochem.2014.05.003.
Atherosclerosis
巻: 236 ページ: 54-61
doi: 10.1016/j.atherosclerosis.2014.06.005