研究課題
ANGPTL8 (Betatrophin) はマウスにおける膵β細胞増殖作用が報告され新規糖尿病治療薬として期待されているが,リポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性を阻害することから別名Lipasin(Lipase inhibitor)とも呼ばれており脂質代謝においても重要な作用がある.ヒトにおいてANGPTL8が抗糖尿病的であるのかは議論のあるところであるが,糖代謝と脂質代謝をまたぐ重要な分子である可能性がある.LPLの活性制御がベータトロフィンの作用として脂質代謝のみに影響するのか,あるいは糖代謝にも影響するのかは不明である.我々は205例のブドウ糖負荷試験をおこなった症例を平均11年経過観察した.観察開始時点で糖尿病が無かった症例で,ANGPTL8の機能低下型変異であるR54W変異保持者において,観察開始時のLPL活性値が低い郡においてHbA1cの上昇が有意に高かった.これは観察開始時の肥満度や空腹時血糖,HbA1c値とは独立した予測因子となることを見いだした.また糖代謝と脂質代謝の関連では家族性高コレステロール血症(FH)が注目されるが,このコホートにおいてFHの糖尿病新規発症は,非FHにくらべて有意に少ない結果であった.血中のANGPTL8濃度はFHの方が低く,その解釈にはさらなる検討が必要と思われる.この成果はAmerican Heart Association Scientific Sessions 2015(米国・オーランド)において報告した.
2: おおむね順調に進展している
概ね研究は順調に進展しているといえる.
薬物療法においてANGPTL8の影響を調べる研究を進めており,その結果が得られると期待される.特に近年は高脂血症治療薬において糖尿病の新規発症リスクが高まるとする報告が注目されているが,そのメカニズムには不明な点も多く,その解明の一部に寄与することが期待されている.
概ね予定通りであったが,解析検体の一部は少数だが次年度に持ち越して解析して有効に使用する予定である.
昨年度に生じた残額については今年度において小数の持ち越し検体の解析にあて有効に使用させていただく計画である.
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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