研究課題
肥満・糖尿病では心筋細胞内に脂肪滴が蓄積し(脂肪心筋)、そこから恒常的に放出される脂肪酸が脂肪毒性を発揮して心機能に様々な影響を与える。本研究では心筋細胞内の脂肪滴の蓄積が不整脈にどのような影響を与えるかについて、老齢の脂肪心筋モデルマウスを用いて検討した。脂肪滴関連蛋白Perilipin(Plin)2を心筋特異的に過剰発現させて作製した脂肪心筋モデルマウスPlin2-Tgを月齢12-15ヶ月まで飼育し、左心房の高頻度電気刺激によるAF誘発性を検討した。心房筋におけるGap junction蛋白コネキシン(Cx)43のmRNAおよび蛋白発現と、免疫染色による細胞内局在性を解析した。また、膜電位光学マッピング法により心房筋の興奮波伝導時間を評価した。Plin2-Tgマウスの心筋では野生型(Wt)マウスと比較して心房で4倍、心室で8倍のトリグリセリドを蓄積し、電子顕微鏡でミトコンドリア周囲に多数の脂肪滴の蓄積を認めた。5分以上持続する遷延性AF発現率はWtの24%に対してTgでは69%と高率であった。心房筋におけるCx43のmRNAおよび蛋白発現はWtとTgマウスで同等であったが、免疫組織化学的解析によるCx43の介在板局在率は、Wtの40%に対してTgでは20%に低下していた。膜電位光学マッピング法による検討ではTgマウスの心房で興奮波伝導時間が延長していた。以上の結果より、Plin2過剰発現による脂肪心筋ではCx43の局在性が変化して興奮波の伝導が障害され、AFを発症し易くなる。この機序が肥満・糖尿病におけるAF発症の一因となっている可能性がある。これらの結果を国内学会にて報告し、論文第一報がrevice中である。
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Biochem Biophys Res Commun
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10.1016/j.bbrc.2016.08.016.
Biosci Rep
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10.1042/BSR20160129