研究実績の概要 |
我々が発見したアディポカインであるvaspinは、脂肪細胞から血中に分泌され、様々な臓器に作用すると考えられる。メタボリックシンドロームの基盤には小胞体ストレスが重要であることが明らかとなっているが、これまでに我々は「vaspinが、小胞体ストレスによって細胞表面に発現したGRP78のリガンドとして作用し、細胞外から小胞体ストレスを軽減する」ことを明らかにした。本研究ではこれまでの研究を発展させて、糖尿病やメタボリックシンドロームに関連した腎障害に対するvaspinの治療効果を証明し、その機序を解明したい。また、腎細胞における細胞表面GRP78のアンカー蛋白の同定とシグナル解明を行う予定である。GRP78は尿細管に高発現していることから、主に尿細管細胞に注目して、まず尿細管病変におけるvaspinの作用について検討を行う。 8週齢のVaspinトランスジェニック(Tg)マウス、Vaspin+/+マウス、Vaspin-/-マウスにストレプトゾトシン(STZ)で糖尿病を誘発し、25週齢まで観察した。STZ誘発糖尿病Vaspin+/+マウス腎臓では、尿細管腔の拡大・尿細管上皮細胞の菲薄化・間質の線維化を認め、Tgマウスではこれが軽減し、Vaspin-/-マウスでは増悪を認めた。TUNEL染色を行うと、Tg, Vaspin+/+, Vaspin-/-の順にTUNEL陽性アポトーシス細胞の増加、またウエスタンブロットによるBax発現の増強を認めた。免疫組織染色では、STZ誘発糖尿病マウス腎臓におけるGRP78発現の上昇は軽度であり、群間の有意な差を認めなかった。 またendotoxin-free BSAをTg, Vapin+/+, Vaspin-/-マウスに5日間投与し、7日目に腎組織を採取すると、糸球体面積はTgはVaspin+/+、Vaspin-/-と比較して有意差をもって糸球体肥大が抑制された。
|