研究課題
我々が発見したアディポカインVaspinは脂肪細胞から血中へ分泌され、インスリン抵抗性や肥満・脂肪肝・動脈硬化を抑制することをこれまでに明らかにした。本研究では腎臓への作用を解明することを目的とする。平成26年度は、Vaspinトランスジェニック・ノックアウトマウスを用いてストレプトゾトシンで糖尿病を誘発して腎病変について検討し、Vaspinが尿細管アポトーシスを抑制し、間質線維化を抑制することを明らかにした。本年度(平成27年度)は、Vaspinトランスジェニク・ノックアウトマウスを高脂肪高蔗糖食(HFHS)で飼育し、腎病変について検討した。HFHS飼育Vaspin-/-マウスでは近位尿細管に著しい空胞形成が観察され、電顕・免疫染色の結果ライソゾームの拡大・増加と考えられた。肝臓において既にVaspinは小胞体ストレスを抑制することを報告したが、HFHS飼育マウスの腎臓においても、vaspinはeIF2αリン酸化など小胞体ストレス関連分子の発現を抑制し、さらにBax発現も抑制した。TUNEL染色を行うと、HFHS飼育Vapsin-/-マウスではTUNEL陽性アポトーシス細胞が有意に増加していた。さらに培養近位尿細管細胞(HK2細胞)を用いた検討では、小胞体ストレス誘導物質tunicamycinによるGRP78, eIF2αリン酸化、CHOP、Baxの発現亢進を、vaspinは抑制した。これらのことからvaspinは高脂肪高蔗糖食飼育マウスの腎臓においても、尿細管アポトーシスを抑制することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究計画としていた(1)HF 飼育マウス腎臓におけるvaspin 作用の検討、(2)培養近位尿細管細胞を用いた Vaspin 作用の検討を行った。その結果、vaspinは高脂肪高蔗糖食により惹起される小胞体ストレスが関連した肥満糖尿病の腎病変を抑制することを示した。とくにvaspinは、近位尿細管細胞における小胞体ストレスに関連したアポトーシスの抑制を有することが明らかとなった。
平成28年度は、尿細管・糸球体構成細胞の細胞膜表面のGRP78 アンカー蛋白の同定とシグナル伝達の解明を行う。培養近位尿細管細胞(HK2)細胞を用いた免疫沈降による検討では、vaspinとGRP78の結合を示唆する結果を得ている。さらにGRP78を介したvaspinの分子作用メカニズムを解明する。
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