研究課題/領域番号 |
26461364
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
安田 修 熊本大学, 医学部附属病院, 准教授 (00372615)
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研究分担者 |
樂木 宏実 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252679)
福尾 惠介 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (40156758)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / メタボリック症候群 |
研究実績の概要 |
Apoptogenic Protein(Apop)はマウスの動脈硬化血管からクローニングした遺伝子である。正常血管よりも動脈硬化血管で高レベルに発現している。発現ベクターを用いて培養細胞に発現させた結果、細胞が能動的な死(Apoptosis)を起こして死滅することからApopと名付けた。しかし生理的な機能は不明なままであった。培養細胞を用いた機能解析によってミトコンドリアに存在するタンパク質をコードしており、発現抑制によってミトコンドリアの脂肪酸代謝を亢進させうることが明らかになりつつある。Apop遺伝子を欠損したノックアウト(Apop KO)マウスを用いてさらに詳細な機能解析を行った。Apop KOマウスでは生後しばらくは野生型と同等な体重であるが、週齢が高くなるにつれて野生型マウスよりも体重が少なくなる傾向がある。またApopは細胞内のミトコンドリア膜上で行われている電子伝達系の活性維持に重要な機能を有していることが明らかになった。電子伝達系はミトコンドリア内膜に存在し、ミトコンドリアの最も重要な機能のひとつであるエネルギー(ATP)生産を行っている。Apop KOマウスでは電子伝達系の活性低下によってエネルギー(ATP)生産が低下し、代償的に脂肪酸代謝が亢進して、電子伝達系によるエネルギー生産の基質であるNADH濃度を上げているものと考えられる。その結果、Apop KOマウスでは脂肪組織が減少しているものと思われる。これらの結果はApop遺伝子制御によってメタボリック症候群発症を抑制し得ることを示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Apop遺伝子を欠損したノックアウト(Apop KOマウス)の表現型解析が予定通りに進行している。Apop KOマウスでは脂肪組織が減少し体重増加も抑制されていた。そこで脂肪酸代謝を行っているミトコンドリア機能を観察し、興味深い知見を得た。まずApop KOマウスからミトコンドリアを単離して解析した結果、ミトコンドリア機能に変化がみられた。Apop KOマウス血液中の乳酸濃度を測定した結果からもミトコンドリア活性の変化は明らかであった。ミトコンドリア機能変化によって代償的に解糖系が活性化されて解糖系の最終代謝産物である乳酸が蓄積されたものと思われる。さらに詳細にミトコンドリアを解析した結果、エネルギー生産系である電子伝達系の活性低下が存在していた。これらの結果はApopがミトコンドリアに存在するタンパク質であること、またミトコンドリアのなかでも電子伝達系医が存在するミトコンドリア膜に局在するという事実に一致する結果であった。
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今後の研究の推進方策 |
Apop遺伝子を欠損したノックアウト(Apop KOマウス)の解析を進める。Apop KOマウスでは脂肪酸代謝が亢進した状態にあることが明らかになりつつある。この脂肪酸代謝亢進はミトコンドリア機能の変化によるものであると考えられる。今後はApop KOマウスにおけるミトコンドリア機能変化をより詳細に解析していく予定である。Apop KOマウスから単離したミトコンドリアを用いて分子レベルでの機能解析が可能になるような測定系を確立する。ミトコンドリアの電子伝達系には多くの遺伝子が関与し、それらが構成する複数の分子複合体が関与している。これらの分子複合体のなかのひとつでも欠損すればミトコンドリアのエネルギー産生系は大きな影響を受ける。Apop KOマウスではそれらの分子複合体の変化を観察していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用する予定の研究費があるが、これは本年度に実行する予定であったApopノックアウトマウスのから単離したミトコンドリアにおける電子伝達系複合体の活性測定が本年度の成果を踏まえて解析手法を見直しし、より正確に測定する必要性が生じたためである。 そこで本年度は解析手法の再考、見直し期間とし、次年度においてより正確な測定手法を確立して詳細に測定、解析することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては本年度の結果を踏まえ、Apopノックアウトマウスから単離したミトコンドリアの電子伝達系複合体活性をより正確に定量測定する。そのため次年度に使用する予定の研究費に本年度の研究費を合わせてより正確な測定系を確立し、より詳細な結果を売るために使用する予定である。
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