研究課題
細胞内プロテアーゼ、カルパインファミリーのうち、唯一の非プロテアーゼ型亜種であるCalpain-6の動脈硬化病変形成における役割を検討した。LDL受容体欠損マウスに高脂肪食を負荷し、動脈硬化病変形成を誘導した。免疫組織化学的検討では、Calpain-6は動脈硬化病変の泡沫化マクロファージに局在していた。Calpain-6とLDL受容体二重欠損マウスの動脈硬化病変は、LDL受容体単独欠損マウスに比較して有意に抑制された。また、二重欠損マウスの骨髄細胞をLDL受容体単独欠損マウスに移植すると、LDL受容体単独欠損マウスの骨髄移植を施した群に比し、動脈硬化病変の形成は44%抑制された。さらに、二重欠損マウスの骨髄細胞を二重欠損マウスに移植すると、LDL受容体単独欠損マウスの骨髄移植を施した群に比し、動脈硬化病変の形成は36%抑制された。以上より、マクロファージに発現するCalpain-6はLDL受容体欠損マウスの動脈硬化病変形成に重要な役割をもつことが明らかになった。Calpain-6欠損マウス骨髄由来マクロファージによる受容体非依存的LDLの細胞取り込み(pinocytosis;飲作用)を検討すると、野生型に比し有意に低下しており、マクロファージの泡沫化も低下していた。骨髄由来マクロファージの分化誘導実験では、Calpain-6欠損によりRhoA/Rac1の発現比が低下した。すなわち、Calpain-6欠損によりRac1依存的なLDLのpinocytosisが低下していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Calpain-6がLDL受容体欠損マウスの動脈硬化病変に存在するマクロファージに限局して発現していることから、動脈硬化病変の形成に重要な役割を持つことが示唆されていた。当該年度に行ったCalpain-6、LDL受容体欠損マウスを用いた骨髄移植実験により、マクロファージに発現するCalpain-6が動脈硬化病変形成の鍵を握ることが動かしがたい事実となった。
LDL pinocytosisの分子機構を明らかにするために、マウスマクロファージに発現するCalpain-6結合タンパク質を、免疫沈降、質量分析を用いて網羅的に解析する。また免疫組織学的手法により、ヒト動脈硬化病変におけるCalpain-6の局在を明らかにする。
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