研究課題
マクロファージは、スカベンジャー受容体を介する酸化LDLの取り込みのほか、ピノサイトーシス(飲作用)によってもLDLを細胞内に取り込み、マクロファージ由来泡沫細胞に変化して動脈硬化病変形成に重要な役割を果たす。LDLの飲作用の分子機構に関しては不明の点が多く、これを解明することによりあらたな動脈硬化治療戦略の構築が期待される。TNF-alphaを初めとする炎症性サイトカインでマクロファージを刺激すると、プロテアーゼ活性をもたないカルパインファミリーの一員であるカルパイン6(CAPN6)の発現が増加した。CAPN6はエクソン・ジャンクション複合体を核内に誘導する因子であるCWC22と細胞質で結合し、CWC22の核内移行を抑制することにより、Rac1シグナル関連分子のスプライシングを抑制した。CAPN6/LDL受容体二重欠損マウスのマクロファージでは、CWC22の核内移行が活発でマクロファージのLDL飲作用は抑制され、その結果LDL受容体単独欠損マウスに比べ動脈硬化病変の形成が抑制された。LDL受容体欠損マウスの動脈硬化病変におけるマクロファージはCAPN6 を高発現しており、マクロファージの運動は低下し、その結果病変部からのマクロファージの排出は低下した。CAPN6欠損マウスの骨髄細胞 をLDL受容体欠損マウスに移植すると、野生型マウスの骨髄細胞を移植したLDL受容体欠損マウスに比し動脈硬化病変形成が抑制された。ヒト動脈硬化病変のマクロファージもCAPN6を高発現しており、CWC22の核内移行を阻害していた。以上よりCAPN6はCWC22の下流にある動脈硬化関連因子のmRNA スプライシングを阻害することにより、動脈硬化促進的役割を果たしていることが明らかとなった。
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Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
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