研究課題/領域番号 |
26461371
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小山 英則 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (80301852)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | RAGE / 動脈硬化 / 血管炎症 / 小胞体ストレス |
研究実績の概要 |
Receptor for advanced glycation end-products (RAGE)は血管細胞の炎症反応を媒介することにより、血管炎症、 動脈硬化進展に関与することが想定されている。細胞表面のRAGEは厳密に調節された細胞内情報伝達により切断(shedding)され、RAGEの炎症作用が修飾される可能性がある。我々はヒト血管内皮細胞を用いて、炎症シグナルとRAGE sheddingの関連を検討してきた。アデノウイルスによりRAGEを過剰発現した内皮細胞において、tumor necrosis factor-α; (TNF-α)はRAGE sheddingを著明に誘導し、その作用はA Disintegrin and metalloproteinase domain-containing protein (ADAM) 10の発現に依存することがsiRNAを用いたgene knockdown実験により明らかになった。類似のADAM17, matrix metalloproteinase (MMP) 2 and MMP9の発現はRAGE sheddingに影響しなかった。RAGEの内因性リガンドであるS100PおよびHMGB1の添加によりRAGE sheddingは増強され、またTNF-α;によるRAGE sheddingの誘導はS100Pのknockdownにより阻害されたことより、内因性リガンドによるRAGE活性化がこのプロセスに必須であることが示された。TNF-αの細胞内情報伝達経路として、JNK-及びp38-MAP kinaseの関与が、MAP kinase阻害薬によるRAGE sheddingの抑制から推測された。TNF-αは有意に小胞体ストレスにかかわるactivating transcription factor (ATF)-4の発現を誘導し, 一方他の小胞体ストレス経路であるX-box binding protein (XBP)-1に対する影響は軽微であった。最後にATF-4のknockdownにより、TNF-α刺激後のADAM10の活性化とRAGE sheddingは有意に抑制された。反対にXBP-1 knockdownはRAGE sheddingに大きな影響を与えなかった。これらの結果から、ヒト血管内皮細胞においてTNF-αは、JNK- , p38-MAP kinaseとATF-4を介してADAM10活性化、RAGE sheddingを誘導することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroでの炎症シグナルによるRAGE切断機序はほぼ明らかにできたと考えている。研究成果の経過についても、国際学会で発表した(9th Metabolc syndrome, Type 2 Diaetes and Atherosclerosis Congress, Sep 12-14, 2014, Kyoto)。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、内皮特異的RAGEトランスジェニックマウス(endo-RAGE Tg)におけるRAGE sheddingとER stressの関連を検討する。ヒトRAGEを内皮特異的に強制発現させたendo-RAGE Tg (CV遺伝背景)マウスは研究協力者の山本博教授(金沢大学)より導入済である。endo-RAGE Tgまたは対照マウスにTNF-αまたはLPSを投与し、RAGE sheddingを、血中ヒトsRAGEを測定することにより評価可能なモデルを確立する。短期実験としてthapsigargin, tunicamycinなどによる小胞体ストレス惹起物質を投与し血中sRAGEを同様に測定する。また、小胞体ストレスの阻害作用を有するtauroursodeoxycholic acid (TUDCA), 4-phenylbutyrate (4-PBA)投与による、TNF-α、LPSによる血中sRAGE増加の抑制作用を検討する。
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