研究課題/領域番号 |
26461372
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井樋 慶一 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60232427)
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研究分担者 |
内田 克哉 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40344709)
布施 俊光 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (50401039)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マウス / CRF / Venus / 5-HT / patch-clamp |
研究実績の概要 |
CRFニューロンはストレス応答系を統括する司令塔であるが,視床下部回路の基本的な動作原理は未だ明らかでない.我々の作成した新規マウス(Itoi et al., endocrinology 155, 4054-4060, 2014)を用い,蛍光可視化されたCRFニューロンにおいて電気生理学的手法を用いPVH内調節局所回路の検討を行った. 灌流液中ピクロトキシン存在下で-60 mV電位固定下に興奮性シナプス後電流 (EPSC) が観測された. seroronin (5-HT)添加によりEPSC頻度が増加し, CNQXとAP5の添加によりEPSCが全て遮断された. TTXにより5-HT惹起性EPSC頻度増加が抑制された.Gタンパク質共役受容体アンタゴニストGDP-beta-Sのピペット内添加によって5-HTの効果は抑制されなかった.5-HT1A,7受容体アゴニスト8-OH-DPAT添加によりEPSC頻度が増加し, 5-HT7受容体アンタゴニストSB269970存在下では5-HT添加によりEPSC頻度が度が増加しなかった. したがって,5-HTは5-HT7受容体を介しCRFニューロンへのGlu酸作動性入力を発火依存的に増加させ,5-HTの直接作用はpresynapticであるものと考えられた. 一方,灌流液中CNQXとAP5存在下で抑制性シナプス後電流(IPSC)が観察された 5-HT添加によりIPSC頻度が減少し, gabazineの添加によりIPSCが全て遮断された.TTXにより5-HTのIPSC頻度減少作用は抑制された.5-HT2作動薬DOIによりIPSC頻度が減少し,5-HT2C阻害薬RS102221により5-HTの効果が阻害された.GDP-beta-Sのピペット内添加によって5-HTの効果が抑制された.したがって,5-HTの作用の一部は5-HT2C受容体を介しCRFニューロンへのGABA作動性入力を発火依存的に減少させるものと考えられた.また,CRFニューロンから逆行性伝達物質がpresynapticに働く可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究により,5-HTがPVH内局所回路を介してCRFニューロンの活動性を上昇させることが明らかにされた.従来の分子生物学的研究から5-HTによるCRFニューロン調節が示唆されていたが,今回Glu作動性およびGABA作動性入力を介して5-HTがCRFニューロン調節を行うことが世界で初めて明らかにされた.したがって,ほぼ当初の計画通りに研究を進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は次の実験を行う予定である: 1. Ca2+イメージング:CRFニューロンにFura2添加後,灌流液中にノルアドレナリンまたは5-HTを加え,細胞内Ca2+の変動を観察する.whole cell clampを行い,Ca2+の変動が発火に同期して発生することを確認する.Aキナーゼ,C-キナーゼ,Gタンパク阻害薬を用いてCa2+によって媒介される細胞内現象を解明する. 2. CRF-iCreマウスのPVHにウイルスベクターを用いてCRFニューロン選択的にChR2を発現させる.急性スライスを作成し光照射によりCRFニューロンを発火させる.CRFニューロンから逆行性に放出される伝達物質を同定し,その作用メカニズムを明らかにする. 3. 得られた成果をSoceity for Neuroscience (2016年11月,San Diegoにて開催予定)で報告し,3年間の成果を国際誌に出版する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことにより発生した未使用額であり,平成28年度の研究遂行に使用する予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
ガラス電極購入費の一部に使用する.
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