研究課題
近年の閉経後乳癌の内分泌治療の中心である第3世代のアロマターゼ阻害剤(AI)が臨床に用いられるようになって10年以上が経過し、近年ではその再発や耐性が大きな問題となっている。これまで我々はERE-GFP導入ER陽性乳癌細胞から樹立した6種類の各種耐性モデル細胞の研究から、細胞内エストロゲンシグナル経路の変化による複数の機序が本耐性に関与していることを明らかにした。その中で、ホルモン耐性と乳癌幹細胞性との関係も疑われた。そこでまず本年度は、MCF-7細胞を親株として作製したAI耐性株Type 1細胞、Type 2細胞、抗エストロゲン剤fulvestrant耐性株であるMFR細胞等を用いて、その癌幹細胞性を、スフェア形成能、SP画分解析、CD44/CD24発現のFACS解析などから検討した。その結果、ER発現を有するホルモン療法耐性株は一様に高い癌幹細胞性を示すのに対して、ER発現を失ったホルモン療法耐性株は癌幹細胞性が低いことが明らかとなった。従って、従来ER陰性細胞であるbasal-like乳癌細胞は、癌幹細胞性がこれらのマーカーの幹細胞性が高いことが知られているが、Luminal型乳癌細胞ではこれとは大きく状況が異なると思われる。Luminal型乳癌では、その癌幹細胞性はERシグナル系によって支えられているのかもしれない。
2: おおむね順調に進展している
概要で述べたように、交付申請書に記載した平成26年度の研究実施計画のほぼすべてを達成し、これまで明らかとなっていなかったLuminal型乳癌とそのホルモン療法耐性株の癌幹細胞性を明らかにし、新たな知見を得ることができた。
これら耐性株のin vitroでの浸潤能などのバイオアッセイやスフェア培養下での各種薬剤感受性などを検討し、前年度に得られた各種幹細胞性の指標と比較検討を行う。特に各種ホルモン療法剤のみでなく、耐性機序との関係が推察される細胞内リン酸化シグナル因子を標的とした分子標的治療薬の効果と、その幹細胞性に与える影響を検討する。見出された耐性機序と密接に関連する幹細胞性関連因子、あるいは各種薬剤感受性との関連が見出された幹細胞関連因子について、その発現ベクターやshRNA等を用いた分子生物学的検討を行い、luminal型乳癌の中での役割について解明する。これらによって乳癌幹細胞性とホルモン耐性との関係を分子生物学的に明らかにし、耐性克服のための根本的解決策を得るヒントとしたい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 4件)
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