研究課題/領域番号 |
26461374
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小澤 厚志 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10573496)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子改変動物 / 多発性内分泌腫瘍症1型 / インスリノーマ / 膵内分泌腫瘍 |
研究実績の概要 |
膵β細胞の発生・分化・増殖機構を解明する目的で、多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1型)の原因遺伝子MEN1および翻訳産物meninの機能解明の研究を遂行している。特に、meninの共役結合蛋白である転写因子JunDとの関連性から実験を進めている。 昨年度までに私達は1)Cre-loxPシステムを用いてmeninと結合能力のない変異JunDを下垂体及び膵β細胞特異的に過剰発現させたマウス(TGマウス)の樹立、2)同マウスの膵内分泌腺の病理学的解析、3)同マウスから抽出した膵島細胞を用いたcDNAマイクロアレイ解析を施行してきた。また4)マウス膵β細胞株(βHC-9、βTC6)を用いた実験で、膵β細胞において、meninがヒストンメチル化能を持つ巨大転写複合体の構成要素である、Ash2, RbBP5と共役結合することを確認した。 今年度は樹立したマウスの表現型の解析として生理学的実験を施行した。野生型マウスおよびRIP-Creマウスを対照群とした。3月齢から15月齢まで経時的に体重および8時間絶食後の血糖値、血清インスリン値を測定したところ、5)TGマウスは対照群と比較して体重に有意差は認めなかった。6)TGマウスでは9月齢以降、対照群と比較して有意に空腹時の血糖値が低下し、7)低血糖は高インスリン血症によるものであること、が明らかとなった。更にTGマウス、対照群マウスから単離した膵島細胞を培養後にインスリン分泌能を詳細に検討したところ、8)TGマウスは高濃度のグルコースおよびカルシウム刺激に対して過剰なインスリン分泌能を有すること、9)KCL刺激で膵島細胞を脱分極させてもTGマウスのインスリン分泌能は対照群と有意差がないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的である1)膵β細胞特異的変異JunD過剰発現マウス(TGマウス)の膵島細胞を用いたcDNAマイクロアレイ解析、2)膵β細胞株を用いたmeninおよびJunDに結合する蛋白質群の単離と同定は、平成27年度までに概ね達成された。特に平成27年度の研究成果から、TGマウスがヒトインスリノーマに極めて類似した表現型を示すマウスであることが判明した。MEN1型のモデルマウスである、Men1ヘテロ接合体マウスは膵内分泌腫瘍のモデルマウスとも言えるが、インスリノーマの表現型を確実に呈するわけではなく、私達の樹立したTGマウスは新たなインスリノーマのモデルマウスとなりうると考えている。この事実は実験計画開始当初には想定していなかったことであり、膵内分泌細胞の腫瘍化機構の解明のみならず、膵β細胞からのインスリン分泌機構の解明という新たに取り組むべき課題が明らかなになったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、私達が樹立した膵β細胞特異的変異JunD過剰発現マウス(TGマウス)は、新たなヒトインスリノーマモデルマウスとなることが示された。10月齢のTGマウスを用いてのcDNAマイクロアレイ解析は既に施行したが、今後は生理学的にも病理解剖的にもインスリノーマを発症する前段階である6月齢での遺伝子レベルでの解析が必要と考える。そのため6月齢のTGマウスおよび対照群マウスからコラゲネース法を用いて膵島細胞群を単離し、これらを用いてのcDNAマイクロアレイ解析を予定する。解析結果から明らかとなる遺伝子群の発現レベルを、個々のマウスから単離したβ細胞において、qPCR法およびウェスタンブロット法にて発現差異を確認し、更にヒトインスリノーマの組織における発現解析を施行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
6月齢の膵β細胞特異的変異JunD過剰発現マウスから単離した膵島細胞を用いてのcDNAマイクロアレイ解析を施行する必要性が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
6月齢の膵β細胞特異的変異JunD過剰発現マウスから単離した膵島細胞を用いてのcDNAマイクロアレイ解析に使用する。
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