研究課題
膵内分泌細胞の分化・増殖機構解明の目的で、多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1型)の原因遺伝子MEN1および翻訳産物meninの機能解明の研究を、特にmeninの共役結合蛋白である転写因子JunDとの関連性から進めた。昨年度までに1)Cre-loxPシステムを用いてmeninと結合能力のない変異JunDを下垂体及び膵β細胞特異的に過剰発現させたマウス(TGマウス)の樹立、2)同マウスの病理学的解析、3)12月齢の同マウスから抽出した膵島細胞を用いたcDNAマイクロアレイ解析を行った。また5)TGマウスは9月齢以降で空腹時の高インスリン血症を呈することが判明した。6)マウスから単離した膵島細胞のインスリン分泌能の検討では、TGマウスは高濃度のグルコースおよびカルシウム刺激に対して過剰にインスリン分泌することが判明した。最終年度には7)膵内分泌腫瘍発症前の8月齢のTGマウスおよび対照群マウスから膵島細胞を単離しcDNAマイクロアレイ解析を施行した。パスウェイ解析、GO-Fisher解析の結果、TGマウスのラ氏島mRNA群では、野生型と比べて転写調節因子や細胞分化誘導因子、血管増生因子遺伝子群の変動が大きく腫瘍増生への関与が示唆された。またMEN1欠損マウスのような細胞周期調節因子p27、p18遺伝子の発現低下は認めなかった。8)変動を認めた遺伝子群について個々のマウスから単離したラ氏島細胞においてqPCR法およびウェスタンブロット法にて発現差異を確認した。私達の研究成果から、本TGマウスがヒトインスリノーマに極めて類似した表現型を示すことが判明した。この事実は実験計画時、実験開始当初には想定しておらず、膵内分泌細胞の腫瘍化機構の解明のみならず、膵β細胞からのインスリン分泌機構の解明という新たに取り組むべき課題が明らかになったと言える。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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